第19回村の未来決めた高松塚 「明日香法」制定、暮らしと共に文化財保存

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伊藤誠
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 半世紀前、高松塚古墳の国宝壁画が見つかった奈良県明日香村。美しい棚田など日本の原風景を今に残すその地で、高松塚を含め数々の貴重な遺跡文化財も大切に守られてきた。「世紀の大発見」は、地元の地域社会のあり方に多大な影響を与えた。

 高度経済成長期の1960年代。田園風景が広がる明日香村は、文化財の保存と開発ブームの間で揺れていた。一方に偏れば、村は立ちゆかなくなる。

 「保存のかけ声だけでは“メシ”は食えない」。力強い意見に拍手が起きた。70年5月24日、旧高市小学校で開かれた「郷土の将来を考える明日香村民会議」には、村長の岸下利一や村議会議長も出席。村民ら約200人が4時間あまり議論した。

 主催したのは、村の青年たち二十数人が前年に立ち上げた明日香史跡研究会。村内の史跡を学習・保存するだけでなく、活動を通じて村の未来も考えようという気概に燃えていた。「どうしたら住みやすい村になるかということ。文化財を最大限生かして発展させるような施策を村に考えてほしかったんです」。当時会長を務めていた福井清康(きよやす)(75)が言う。

 背景には、66年に施行された古都保存法による厳しい開発規制があった。多くの村民が「『現状保存』だけでは村が衰退する」という不満を抱いていた。

 村民会議からおよそ2週間後…

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