第3回「孤独の時代」の私たち 人間性を失わないためのよりどころを探そう

[PR]

アレクシエービッチが見たウクライナ侵攻㊦

 2015年のノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさん(74)が昨年11月下旬、事実上の亡命先となっているベルリンで、朝日新聞の単独インタビューに応じた。やりとりは安倍元首相の殺害事件から日本政府の原発回帰、人工知能、人間と孤独の問題にまで及んだ。

世界にあふれる狂気 憎しみは伝染する

 ――日本では22年、元首相が銃で殺害される事件が起きました。容疑者は、母親が新興宗教にのめり込み、家庭が崩壊したことに恨みを抱き、元首相と教団との関係を理由に事件を起こしたとされます。

 憎しみという狂気が世界であふれています。それは、伝染するようになりました。どこの国でも、紛争が起きていない国でさえも、似たようなことが起こっています。

 地下鉄の車両に乗ってきた人がいるとします。その人が何を考えているのかは分かりませんよね。外見では(危険な)人を見分けることは絶対にできません。私たちは人々の考えを知らなくてはいけない。必要なのは対話です。

 教室で乱射事件を起こしに登校する子どもと、その隣にいる普通の子どもを見分けることも不可能です。学校や警察は、子どもたちとたくさん話し合わなければなりません。

 ネット上で彼らが何を語っているのか、注意深く見つめる必要があります。子どもたちをケアする専門家がもっといるべきです。学校の役割は、とても大きい。

 ――ネットの発展とともに私たちのコミュニケーションは物理的に容易になった一方で、より多くの人々が孤独を感じている気がします。

 私たちが生きているのは孤独…

この記事は有料記事です。残り1824文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
根本晃
イスタンブール支局長|中東・欧州担当
専門・関心分野
国際政治、トルコ、ガザ、ウクライナ、語学
ウクライナ情勢 最新ニュース

ウクライナ情勢 最新ニュース

ロシアのウクライナ侵攻に関する最新のニュース、国際社会の動向、経済への影響などを、わかりやすくお伝えします。[もっと見る]

連載憎悪と孤独の世界で アレクシエービッチが見たウクライナ侵攻(全3回)

この連載の一覧を見る