石内都の写真世界 横須賀、ひろしま、記憶と時間に向き合い朝日賞

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編集委員・大西若人
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 ヨコスカの街、女性の手足、そしてヒロシマの遺品――。記憶をほぐすような表現で知られる写真家の石内都(75)が、今年度の朝日賞に決まった。私的なまなざしに根ざしつつ、戦後史を見渡すスケールも備え、高い評価を得ている。

 「記憶と時間に向きあい続ける写真表現の達成」

 これが今回の受賞理由だ。「受賞は意外でしたが、今いただくのは、広島(の被爆者の遺品)をずっと撮っている意味が大きいかな。私は広島に呼ばれた感じです」と話す。

 群馬県桐生市に生まれ、基地の街・神奈川県横須賀市の6畳一間で育った。多摩美術大で染織を学んだ後、カメラと暗室道具を譲り受け、写真を独習した。

 出世作は、1977年の個展「絶唱、横須賀ストーリー」で発表した成育の地を撮った連作だ。横文字のあふれる街や潮風吹きすさぶ海岸を、荒れた粒子、強いコントラストの白黒写真で捉えた。ときに画面が傾き、撮影者の息づかいや身ぶりもうかがえる。

 「個人的な恨みや痛みがあったからね」。貧しかった日々や女性であることを強く意識させられた街と改めて向き合った。この後、同じ視線で古びたアパートを撮った「アパート」、旧赤線地帯の建物の内外を捉えた「連夜の街」を発表。「横須賀」と合わせ初期3部作といわれ、79年には女性初の木村伊兵衛写真賞も受けた。

 写真をやめることも考えてい…

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