芥川賞候補作家は仙台在住の書店員 「生活者の人生を肯定したい」

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三井新
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 19日夜に発表される第168回芥川賞の候補に、仙台市在住の作家佐藤厚志さん(40)の小説「荒地の家族」が選ばれた。書店員として勤めながら続けてきた執筆活動。東日本大震災の爪痕が日常に溶け込む中、そこで暮らす人たちの生き様を肯定的に捉えた作品だ。

 舞台となったのは宮城県沿岸部の亘理町。東日本大震災の津波で仕事道具をさらわれた40歳の植木職人坂井祐治は、その2年後に妻を病気で失い、苦しい日々を過ごす。決して戻らない元の生活を願いつつ、必死に生きていく様を描く。

 昨年発売の文芸誌「新潮」12月号に掲載され、初めて芥川賞の候補になった。「すごくうれしかった。今は落ち着いて静かに(結果を)待っている感じです」と心境を語る。

 現実の被災地では、震災からの復旧・復興事業が落ち着く中で、コロナ禍が日常を覆う。佐藤さん自身、「平常が分からなくなって、これからどうなるかも見えない」と口にする。

 そんな心揺らぐなかで「なんとなく『元に戻ればいいですね』って言うけど、『よかったという時間は一人ひとり違うんですよ』と(この作品で)言いたかった」と振り返る。

 佐藤さんは1982年に仙台市で生まれ、東北学院大学文学部英文学科を卒業し、現在は丸善仙台アエル店(仙台市青葉区)で書店員として働いている。

 大学1年生の時に大江健三郎

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