「鉄鎖の女性」事件が問う中国 公判で裁かれなかった人身売買の責任
中国江蘇省の農村で人身売買の被害者だった女性が鎖につながれた状態で見つかった事件で、女性との間に8人の子を持つ「夫」の董志民被告に4月7日、虐待と監禁の罪で懲役9年の実刑判決が言い渡された。
中国社会に衝撃を与えたこの事件への注目度は高い。加害のひどさに比べて量刑が軽すぎるという批判や、人身売買の買い手としては裁かれなかったことへの憤りが広がっている。
中国では女性の誘拐と人身売買が深刻な社会問題となってきました。「一人っ子政策」の影響で男女のバランスがくずれ、女性より男性の数が多くなった農村部で、貧困層の男性と結婚を強いられる事例などが伝えられています。
中国東部の江蘇省徐州市豊県で撮影された女性の動画が拡散し始めたのは、昨年1月下旬だった。粗末な小屋で、首を鎖につながれて閉じ込められていた。女性は保護され、病院に収容された。
董被告は事件発覚まで、子だくさんの父親として動画アプリを使って自らをPRしていた。地元のちょっとした有名人となり、企業の宣伝に起用されたこともある。
女性の動画は、この家庭の様子をSNSにアップするために訪ねた男性が撮影したとみられる。一気に関心が集まり、誘拐や人身売買、性的暴行の被害者ではないかという声がわき起こった。
地元当局は当初、人身売買を否定したが、女性が繰り返し人身売買の被害に遭っていたことが判明した。問題を放置してきた当局にも批判の矛先が向いた。
「鉄鎖の女性」。女性はそう呼ばれるようになった。女性が誘拐され、売買される対象であることへの強い怒りが社会で共有された。昨年2月の北京冬季五輪と同じ時期に、人権問題に焦点が当たることになった。
董被告は50代。江蘇省の調査によると、女性は45歳とみられている。
記事の後半では…
中国社会からは量刑について怒りの声が上がりました。その理由について、当局も説明に追われることになります。
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徐州市中級人民法院(地裁に…