公立中高一貫校、誰のため? 世帯年収、難関化…教育社会学者の視点

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聞き手・田渕紫織
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データで読む東京都の教育②

東京大・中村高康教授(教育社会学)に聞く

 東京都内の公立小学生のうち、2022年度に都内の私立中学校に進学したのは19・3%でした。一方で公立中高一貫校に進学した子は1・7%、同校を受験した子に広げても7・5%で、まだごく一部と言えます。

 都内には区市町村立の中学が601校ありますが、公立中高一貫校は11校。近々新たに開校するという話は聞きませんし、割合が急に増えることはないでしょう。

 都立中高一貫校の設置検討の際、都教委がまとめた報告書では、高校受験の影響を受けずにゆとりある学校生活を送れることや、6年間をかけての計画的な指導を受けられることなどが、中高一貫教育の利点として挙げられています。

 こうした点を魅力に感じて中高一貫教育を受けたくても、経済的な理由から私立への進学が難しい子もいます。でも公立中高一貫校なら、その機会が得られます。文部科学省による21年度の全国調査では、中学でかかるお金(学校教育費、給食費、学校外活動費の合計)の平均は、公立は年約53万円、私立は約143万円で、私立は公立の2・7倍でした。

「安い私立」ならば…

 受験準備のために、多くの子は塾に通います。公立中高一貫校の入試は「適性検査」と呼ばれ、出題は学習指導要領の範囲内。私立中と比べて知識量を問う問題が少ないとされますが、塾では入試対策の指導を進めています。塾代を負担できるか否かで、学びの機会の差が生じています。

 実際に入学している子の世帯…

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この記事を書いた人
田渕紫織
東京社会部|災害担当
専門・関心分野
災害復興、子ども