第1回しぼんだ「刑事事件」、長引く質問権調査 過去の清算に背向ける政権

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 肌寒い冬の日だった。黒いスーツの文化庁の職員2人は、机を挟んで座る相手の「証言」を一つ、また一つ確認していった。

 「母方の先祖の供養ということで50万円を献金したんですね。間違いはないですか」

 相手とは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者。総額800万円以上の献金被害を訴えていた。

 文化庁の2人は、1人が聞き役に。もう1人は、さらに続く証言を手元のノートに書きとめていく。

 最初は旧統一教会とは告げられず、家系図や先祖についての勉強会と称していたこと。1年以上経ってから教団だと分かり、身内に不幸があると献金を求められたこと。

 2時間以上が経ち、聞き取りは終わった。

 教団への解散命令を裁判所に請求することを視野に、文部科学省は教団の「悪質性、組織性、継続性」を示す証拠の収集を続けている。文化庁による聞き取りはその一環だ。

 岸田政権は、解散命令を請求することができれば教団との決別をアピールする材料になると計算している。だが、文科省宗教法人法の「報告徴収・質問権」を初めて教団に行使し、証拠集めに着手してから、すでに7カ月余りが経った。

 今月に入って岸田文雄首相は、解散命令請求に関して周囲に語った。「しっかりと証拠を準備しないといけない。質問権で(教団から)核心的な情報を得るのは難しい。ヒアリングを積み重ねることが重要。まだ時間がかかる」

 長期化には、ある理由があった。

安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件から8日で1年。この事件をきっかけに、政治と旧統一教会との関係が次々と明らかになりました。社会を大きく揺るがした教団問題のいまを連載で追います。

初回は段ボール8箱 直近は封筒1通と宅配袋二つ

 「宗教法人法に基づき、報告…

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