「新しい戦前」の今こそ、加害の歴史忘れず「経験化」を 奥泉光さん
戦争体験の風化が言われて久しい。「新しい戦前」などというきな臭い言葉も飛び交い始めている。そもそも、私たちは「あの戦争」や「戦後」を総括できているのだろうか。
先の大戦について数多くの作品を手がけるのみならず、戦争文学や歴史にも精通する作家の奥泉光さんに、「『戦争の語り方』の語り方」について聞いた。
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戦争「体験」はたくさんあるが…
――芥川賞を受賞した「石の来歴」をはじめ、「グランド・ミステリー」「神器」など、アジア太平洋戦争についての小説を発表してきました。
「日本だけで310万人、アジアなど交戦国を含めて2千万人超とも言われる犠牲者を出した巨大な体験です。繰り返し参照し、こだわり続けるべき歴史ですが、日本人にとってなお未解決の課題をはらんだ対象だからでもあります」
「僕が書いてきた作品は、いわゆる歴史小説ではなく、あくまでも日本が現在直面している問題に迫ってきたつもりです。別の言い方をすれば、私たちは1945年8月15日の前後で質の違う時間を生きているわけではない、ということを常に出発点にしています」
「作品を書くにあたって、参考のために将兵の証言や様々な記録、作家の戦中日記や戦争文学を読み込みました。そこで痛感したのは、戦争『体験』は有り余るほどあるのに、日本社会はそれを十分に『経験化』できていない、ということです」
――「経験化」ですか。
「体験は繰り返し問われ論じ…
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- 【視点】
たいへん興味深いです。近年では、歴史学と物語を対立的・個別的に捉える向きもありますが、そんな単純ではないことがきわめて適切に指摘されています。物語は、お涙頂戴の国威発揚だけではありません。実証主義的な歴史叙述にも関係していますし、われわれが
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