第1回ヤングケアラーであることは誇り イギリスの若者たちに扉開いた支援
大人にかわって家族の世話や家事を日常的に担う――。「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちが日本国内でも認識されるようになってきた。そんなヤングケアラー支援が世界で最も進んでいるとされるのがイギリスだ。身近になりつつある社会的な課題に私たちはどう向き合えばいいのか。現地を訪れ、四半世紀にわたって支援活動を続ける団体や関係者を取材した。
ロンドンから電車で約2時間。英中部の都市シェフィールドにある、ヤングケアラーを支援する団体「シェフィールド・ヤングケアラーズ(SYC)」のオフィスを訪ねた。
「姉のケアをしてきたことを誇りに思っています」
ケンブリッジ大学の学生のサラ・レーマンさん(21)はそう語り、笑みを浮かべた。
パキスタン出身で、2010年末、家族でシェフィールドに移り住んだ。難病を抱える姉(27)のケアのためだった。
姉は全身に腫瘍(しゅよう)ができる「結節性硬化症」の影響で、てんかんの発作が起きたり、学習障害があったりする。父は弁護士、母は介護関連の仕事で家を空けることが多く、サラさんは8歳の頃から姉を世話してきた。
最初は、両親をサポートする形でのケアだった。母が作る料理を姉のもとに運び、食事をとる際にもそばで見守った。
年齢が上がるにつれ、自分で料理を作ったり、姉を連れてカフェや図書館に行ったりと関わりが増え、学校に行く前や帰宅後の時間帯をケアに費やすように。年の離れた妹(7)の世話も引き受けた。
てんかん発作はいつ起こるか分からず、家にいるときは常に姉を気にかけた。それでも、「姉をサポートしたり、家事を手伝ったりすることは日常生活の一部だと、疑問は感じませんでした」と振り返る。
転機は14歳 「これは自分のこと」
転機は14歳の頃。姉を担当…