使いたかった「きさん、くらしあげるぞ」 リアルさ増すドラマの方言

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城真弓
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 今年、話題になったNetflix(ネットフリックス)配信のドラマ「サンクチュアリ―聖域―」。相撲の裏側を描いたエンタメ性の高いストーリーもさることながら、主人公の出身地・北九州市のコテコテ方言が随所に使われている点も強烈な印象を与えた。

 ドラマや映画などで近年、こだわりを増す方言のリアルさ。世界配信のドラマでもなぜ、局地的な人にしか通じない言葉を描写する必要があったのか。

 「サンクチュアリ」は、北九州市・門司生まれの主人公・小瀬清(一ノ瀬ワタル)が角界でのし上がろうと奮闘するドラマ。5月から配信が始まり、「週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)」入りするなど大ヒットした。

 目立つのが、方言のセリフだ。

 「なんか、きさん。くんなちゃ」(何だ、お前。来るな)

 「やけ、なんなん」(だから、何)

 親の商売が失敗し、家庭が崩壊。借金を重ねる母親に、入院する父親――。どん底からはい上がろうともがく主人公が発する荒々しい方言は、「違和感がない」「懐かしい」などとSNSでも話題になった。

 主人公らの方言指導を行ったのは、門司在住の劇作家・泊篤志さんだ。これまでも北九州の方言を使った舞台を多く手がけてきた。

 「やるからには、やっぱり地元の人が聞いて納得できるものにしたかった」

 泊さんによると、制作陣から送られてきた当初の台本には、博多弁のような言い回しのセリフが書かれていたという。

 「『○○っちゃん』『○○ばい』みたいな。でも、北九州市東部では『ちゃん』も『ばい』も使わない」

 自身が視聴者として見た過去の映像作品の中にも、方言が「福岡」や「九州」でひとくくりにされていると違和感を感じることがあった。

 俳優に直接指導するわけではない。登場人物のセリフを方言に書き換え、録音した音声データを納品するという方法をとる。

 締め切りまで2週間。短期間ながら、こだわるところにはこだわった。

 例えば、主人公が東京でホステスの七海(寺本莉緒)と知り合うシーン。

「サンクチュアリ―聖域―」に登場する方言のセリフは実に「リアル」。でも一方で、映画やドラマの方言はどんどん「バーチャル化」しているそうです。後半では日本大学の田中ゆかり教授が、「リアルさとバーチャルの関係」について解説しています。

 主人公の話す言葉の末尾に「…

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この記事を書いた人
城真弓
西部報道センター北九州総局|教育・子育て、北九州市政担当
専門・関心分野
地方・教育・療育・子育て・食・防災