取り調べ映像の提出命令、高裁が範囲を短縮 無罪事件めぐる国賠訴訟

山本逸生
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 大阪地検特捜部に業務上横領罪で起訴され、無罪となった大阪市の不動産会社の元社長が「違法捜査で精神的苦痛を受けた」として国に7億7千万円の損害賠償を求めた訴訟に絡み、大阪高裁は22日、大阪地裁が国に証拠提出を命じた取り調べ映像の範囲を、約18時間分から約48分間分に変更する決定を出した。地裁決定を不服とした国側の即時抗告を一部認めた形で、元社長側は最高裁に特別抗告か許可抗告する方針。

 原告の不動産会社「プレサンスコーポレーション」の山岸忍元社長(61)側の代理人が明らかにした。約48分間分の映像は元社長の部下への取り調べで、山岸元社長の刑事裁判で流されている。

 高裁はその他の映像は刑事訴訟法に基づき非公開とするのが原則だと指摘した。今回の訴訟を進める上で、「取り調べ映像は客観的な形で記録された最も適切な証拠」としつつ、部下のプライバシー保護との関係を考慮すると、証拠提出するかは「検察官の裁量に委ねられる」とした。

 決定を受けて記者会見した元社長側代理人の中村和洋弁護士は、「有罪かどうかを判断する刑事裁判と、捜査の違法性を明らかにしようとする民事裁判とは異なる。除かれた部分には検察官が机をたたいたり、強い口調でののしったりする場面がある。極めて不当で検察官を守る決定だ」と非難した。

 山岸元社長は「検察官の違法な取り調べは全面的に明らかにされるべきであり、もっと広く提出命令が出されるべきだ」とのコメントを出した。

 大阪地検の北岡克哉次席検事は「コメントすることはありません」との談話を出した。

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この記事を書いた人
山本逸生
大阪社会部|裁判担当
専門・関心分野
司法、福祉、労働