麻生氏発言に指摘された「ルッキズム」 米国での差別との闘いに源流
麻生太郎・自民党副総裁が講演で、上川陽子外相について「そんなに美しい方とは言わない」「おばさん」などと発言(その後撤回)したことに対し、ジェンダー差別だ、ルッキズム(外見至上主義)だ、という批判が巻き起こりました。日本でも議論される場面が増えた「ルッキズム」。歴史は割と古く、1970年代にアメリカで起きた肥満差別への抗議運動の中で生まれた言葉だとされています。日本ではどう捉えられ、今回の麻生発言に当てはめるとどこに問題があるのか、ルッキズムの研究を続ける東京理科大の西倉実季教授に聞きました。
――ルッキズムという言葉はいつできたのでしょうか。
78年に米紙ワシントン・ポスト日曜版「ワシントン・ポスト・マガジン」の記事で、「見た目による差別」という意味で初めて使われたとされています。「Fat Pride」というタイトルの大型記事で、肥満を理由とした差別をなくそうという「ファット・アクセプタンス運動」について書かれています。
当時からアメリカでは肥満差別が深刻でした。映画館や飛行機の座席が小さくて座れずに周囲から白い目で見られるなど、太っているだけで日常的に尊厳が傷つけられる経験をしてきた人が抗議運動を起こしました。その人々が生んだ新しい言葉として「ルッキズム」が紹介されています。
――その後はどのような場面で使われるようになったのでしょうか。
90年代ごろからは、英語圏の経済学の分野で「外見によって労働市場での成功に差が生まれている」という研究が発表されるようになりました。ルッキズムは男女問わず、雇用での外見差別とそれに伴う経済的不利益という文脈で語られることが多かったです。
アメリカのいくつかの州や都市では90年代から2000年代にかけて、外見を理由にした差別を禁じる条例が制定されました。実際に、肥満を理由にスポーツインストラクターの契約を断られた人がサンフランシスコ市の人権委員会に申し立てをし、条例を根拠に不当な外見差別が認定された例もあります。オーストラリアの一部にも、同様の法律があります。
日本ではモデルのSNS投稿から
――日本でルッキズムが注目を集めたきっかけは何だったのでしょうか。
日本で社会的に広く使われる…