AI時代の四国遍路とは 便利さとアナログの交流、共存していくには

通訳ガイド・細川治子
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しこく宝島

 対話型AI(人工知能)「ChatGPTチャットGPT)」の進化がすごい。旅の予定さえも作ってくれる。「京都3日間ツアー」と入力すると、おすすめスポットと共に交通手段まで教えてくれた。続いて「歩き遍路43日間」の行程を相談した。四国霊場の札所の名前や所在地をたくさん間違えていた。どんどんデータを蓄積して賢くなるAIも、四国の案内は苦手なようだった。

 外国人遍路が最も求めているのは、宿情報――。先日、高松であった「四国遍路シンポジウム」で、シンクタンク「百十四経済研究所」がインバウンドの受け入れ環境の課題を報告した。コロナ禍を経て宿泊施設が急減し、巡礼は「宿を探す旅」になっているという。加えて、電話でのみ予約を受け付ける宿も多く、日本語が話せない人にとってはハードルになっている。外国人の声を集めたモニター調査では「インフラがないのに、訪問者を招き入れ増やすことは冒涜(ぼうとく)」という厳しい意見も寄せられた。

 パネリストとして参加した私も、この春に来日するアメリカ人親子の宿の予約を手伝うのに苦労した経験を話し、「ネットでアクセスできるサポート窓口が欲しい」と会場で訴えた。宿の廃業には高齢化、後継者不足の問題があるので根深いが、せめて宿を予約しやすくして、ストレスを取り除きたいものだ。遍路が減り、さらに宿が減るという悪循環は避けたい。

 半面、ネットに頼りすぎると遍路の良さが味わえないような気もしている。7年前に四国を歩いた時、スマホをしまい、自然の中で体を動かすことに喜びを感じた。ネットから離れる「デジタルデトックス」で、五感が研ぎ澄まされたような気がした。田舎では地図アプリが使えなくても、住人が正しい道に導いてくれた。そこから始まる会話も旅の魅力だった。

 その後訪れたスペイン世界遺産サンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼道はネット情報が充実していたが、ある宿の女性オーナーはこう語っていた。「きちんと計画を立てられ、外国人が来やすくなった。でもスマホとにらめっこして歩くのはつまらないわよね」

 遍路は、便利さと引き換えに我々が失ったものに気づかせてくれる。海外から、宗教に関わりなく四国を目指す人が増えている理由も、そこにあるような気がしている。外国人のモニター調査では、巡礼前に比べて期待以下だったことが少なくない中、「地域住民との交流」は96%が「楽しめた」と回答、事前の期待度を上回った。

 時代に合わせて遍路のスタイルは変わる。でも、AIの提案する行程をなぞるスタンプラリーにはしたくない。昔ながらのアナログ文化を残しつつ、デジタル社会との共存のあり方を考える時期にきている。

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