AI(人工知能)の進化によって、多くの人が仕事を奪われる――。そんな未来図がまことしやかに語られるなか、ベーシックインカム(BI)の導入をめぐる議論が再び盛り上がりつつある。失業対策も兼ねてすべての人に最低限の生活費を給付するものだが、果たしてBIでAIの「脅威」は乗り越えられるのか。そこに落とし穴はないのか。財政社会学が専門の井手英策・慶応大教授に聞いた。
「AIが仕事を奪う」 それって本当?
ここ数年、コロナ禍に加えてAIブームによって雇用不安がしきりにあおられたことで、ベーシックインカム(BI)を巡る議論が再び高まっています。単純労働のみならず高度な専門職もAIに代替され、失業者と生活保護対象者が劇的に増える。だから、あらゆる国民を救済する制度として一律に現金を支給するBIが必要だと。
しかし、これは議論の前提が…