さらば「敵対的買収」タブー視消え続々 指針や統治改革で潮目変化

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江口英佑 稲垣千駿
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 相手企業の同意を得ずに買収を仕掛ける動きが国内でにわかに活気づいている。「敵対的買収」と呼ばれ、タブー視する向きもあったが、このところ、潮目が変わりつつある。何がきっかけで、どう変わっていくのか。

 突然の幕引きだった。

 「同意なき買収」。いわゆる敵対的TOB(株式公開買い付け)の行方は、攻めあぐねた「買い手側」の撤退によって収束した。

 5月9日、「買い手側」であったブラザー工業の佐々木一郎社長は、こう語った。

 「事実誤認や根拠を欠く主張を繰り返す不誠実な態度から、今後、信頼関係を築くことは見込めないと判断した」

 TOB表明から、58日目のことだった。

 ブラザー側が鋭く言葉を突きつけた先は、浜松市に本社を置く「ローランドディージー(DG)」。ブラザーが仕掛けたTOBの「買われる側」にあたる。

 買い手側による事実上の「断念」宣言をうけて、ローランドDG側は同16日、MBOが成立したと発表した。

 ローランドDGは、主力商品であるプリンターの基幹部品をブラザーから調達している。にもかかわらず、両社の対立は、抜き差しならなくなった。

 対立構図はどうやってできたのか。時計の針を、今年2月に巻き戻す。

異例の対抗TOB 問われたブラザーの本気度

 直接のきっかけは、2月9日…

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この記事を書いた人
稲垣千駿
経済部|トヨタ自動車担当
専門・関心分野
自動車・証券業界、企業統治、金融政策