「1円も値引きできない」家電、なぜOK? 値札の「指定価格」とは

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田中恭太 丹治翔
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 「家電量販店で『この商品はメーカーから値段を決められていて、1円も値引きできません』と言われました。こんなことは初めてです。なぜでしょうか」

 SNSを通じて読者とつながる#ニュース4U取材班にこんな投稿が届いた。商品の価格は販売店が自由に決めるのが原則のはず。背景を探ると、あるメーカーが数年前から始めた仕組みの存在があった。

新しい食洗機を買おうとしたら

 投稿したのは、さいたま市に住む主婦(72)。近所の家電量販店で4月、10年以上使った食洗機を買い替えた。

 この店で買い物をするときは、1割ほど値引いてもらったり、金額の端数を切り捨ててもらったりしてきた。女性が買おうとしたのは、以前と同じパナソニック製の新型。いつものように「どれぐらい値引いてもらえますか」と販売員に尋ねると、「この商品は一切値引きできません。どこの店で買っても同じ値段です」と説明があった。

 女性は食い下がった。「ポイントで還元する店もあるのでは」。販売員からは「その分を価格に上乗せするので同じことです」。「違反にはならないの」という問いも、「公正取引委員会も認めています」と返された。

 性能には満足していたので、女性は値引きを諦め商品を購入した。しかし、販売員の説明は最後まで納得できなかった。「どうしてか取材してほしい」と取材班にメッセージを送った。

説明に「指定価格」の文字

 記者が商品のホームページを確認すると、「一部店舗ではメーカー指定価格での販売となります」と記載があった。「指定価格」とは、パナソニックが独自に2020年春から一部の商品で始めた取り組みだ。その後、日立製作所の子会社やロボット掃除機「ルンバ」を販売するアイロボットジャパンでも取り入れられている。

 小売価格は本来小売店が自由に決めるもの。商品をつくっているメーカーが、自社商品を売る小売店などに対し、小売店で販売するときの価格を強制することは「再販売価格の拘束」として独占禁止法で原則禁じられている。

 消費者が「価格」で小売店を選べなくなり、小売店同士の価格競争がなくなれば、消費者は本来安く買える商品を高く買わされることにもなる。メーカーが消費者に示す価格が「希望小売価格」「参考価格」などの表現にとどめられるのはこれが理由だ。

公取委も「問題にならない」とした理由

 だが、パナソニックの「指定価格」については、公取委は「独禁法上、問題にならない」と容認している。

 なぜか。パナソニックは一部…

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