第5回毒親のトラウマ「言語化」して向き合って 精神科医の片田珠美さん

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聞き手=山本悠理 編集委員・岡崎明子
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 子が親から受けた虐待のトラウマは、後年になっても当事者を苦しめ続けることがあります。幼少期に親から受けた心の傷と、当事者たちはどう向き合えばいいのでしょうか。「子どもを攻撃せずにはいられない親」の著者で、自らも「毒親」の支配に苦しんだという精神科医の片田珠美さんに聞きました。

 ――そもそも子どもを虐待する親は、どういう心理状態にあるのでしょう。

 「子どもは自分のもの」とみなし、支配欲や所有意識が強い傾向があります。そしてその支配方法は、三つのパターンにわけられます。

 一つ目は子どもの罪悪感をかき立てるもの。たとえば母親が「お前を産むために私は仕事を辞めなければならなかった」「お父さんと一緒にいたくなんかなかったけど、お前を経済的に困らせないよう我慢している」などと言う。すると子どもは「恩返しをしないと」という思いにとらわれ、コントロールされやすくなります。

 二つ目は、親の「敗者復活戦」を子どもにやらせようとするもの。自分が行けなかった良い大学に行かせようと、子どもの意思を聞かずに無理な教育を強いるのが典型的な例です。

 そして最後に、二つ目と関連しますが、「お前のため」という言葉でコントロールを正当化しようとするものです。「良い学校に行かせるのはお前のため」「医者を目指すのはお前の将来を思ってこそ」。実際は教育虐待と思えるような行為であっても、そうした言葉によって覆い隠そうとするのです。

巧妙化する「支配」 学歴社会も背景に

 ――こうした行為の背景には何があるのでしょう。

 親の満たされない承認欲求で…

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この記事を書いた人
山本悠理
デジタル企画報道部
専門・関心分野
現代詩、現代思想、演劇・演芸、法律学
岡崎明子
編集委員|イチ推しストーリー編集長
専門・関心分野
医療、生きづらさ、ジェンダー、働き方