7月7日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。
馬場あき子選
一片の白樺の樹皮で火を起こすひとりキャンプは原始のにおい(岩沼市)相澤 ゆき
被災後のふるさとの海解禁日に二時間休まず栄螺(さざえ)採る海士(あま)(石川県)瀧上 裕幸
じゃが芋は捨てた皮から芽を出してぐんぐん育つ侮るなかれ(菊池市)神谷紀美子
☆ウクライナの平和を願ふメッセージカード受けたり無言館出口(鹿嶋市)大熊佳世子
一キロ先の宅地に熊の出没し二十年経つ柿の木を切る(五所川原市)戸沢大二郎
怪我せぬよう牛の角突き引き分けに山古志(やまこし)に残る知恵と慈悲かな(小金井市)神蔵 勇
川面低くぶんぶんしてるトンボをはね上がり食う鯉梅雨来たりたり(埼玉県)濱島 宗雄
酔っぱらい電話をかけてくる人と宇宙旅行の約束をする(富山市)松田 梨子
授業中こそこそと読む小説に「狐鼠々々(こそこそ)」とありて思わず感嘆(壱岐市)内山 圭三
生傷の絶えない吾子の大切な蟷螂(かまきり)の卵が朝に孵化(ふか)せし(海老名市)加藤 雄三
【評】第一首のひとりキャンプの火起こしはまさに原始の火を得るときめき。一片の白樺(しらかば)の樹皮の火も神秘めく。第二首は被災後の初の素潜り解禁日。待ちに待った海士の気負いが「二時間休まず」にみえる。第三首の捨て芋の皮の生命力は凄(すご)い。
佐佐木幸綱選
ポルシェ止めアルマーニ脱ぐ…
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