妻子3人殺害、被告に懲役30年判決 「痛みや恐怖、言葉で表せぬ」
愛知県扶桑町と犬山市で2022年8月、妻や小学生の長男、長女を殺害したとして、殺人罪に問われた夫の田中大介被告(44)の裁判員裁判の判決が9日、名古屋地裁であった。久礼博一裁判長は「理不尽な犯行で結果は誠に重大」とし、求刑通り懲役30年を言い渡した。
争点は、「妻が自分の浮気を疑い盗聴をしている」などと被告が思い込んでいた「妄想性障害」の程度。弁護側は、障害により被告は心神耗弱だったと主張していた。
判決は、精神鑑定などを踏まえ、障害は軽症だったと指摘。妻殺害のきっかけとなった口論など、犯行の背景などへの妄想の影響は「否定できない」としつつ、口論の中で被告が感情的になり、自分の意思で殺害という方法を選択したとして完全責任能力を認め、弁護側の主張を退けた。
判決によると、被告は22年8月9日、扶桑町の自宅で妻(当時42)の首を絞めて殺害。犬山市の山中に止めた車内で長女(同9)の首を絞めるなどし、長男(同6)の首も絞めて殺害した。
「もう仲直りできない。ごめんね」
事件当時、田中被告の自宅周辺には驚きと悲しみが広がった。近隣住民は当時の取材に「お父さんは子ども思い、お母さんはにこやかな人。なぜこんなことが起きたのか」と話していた。
仲の良い家族を一変させた事件。「謝っても許してもらえないと思う。でも毎日、3人のことを思い出す。楽しかったことばかりですから……」
被告はこれまでの公判で声を詰まらせながら事件について話した。
自分の携帯の電池の減りが早いことなどをきっかけに「盗聴されている」との妄想を深め、妻と口論に。「まだ死にたくない」と訴える妻の首を絞めた後、2人の子どもを連れだし、「お父さんとお母さんはけんかして一緒に住めなくなった」と話した。長女が「仲直りすればいいじゃん。私も一緒に謝るから」と返すと、「もう仲直りできない。ごめんね。お母さんを殺してしまった」と打ち明けたという。
子どもだけ生き残れば、「殺人犯の子」としていじめを受け、辛い思いをするのでは――。そう考え、被告は伝えた。
「お父さんは自殺する。一緒…
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