第5回「私の口座空っぽ」駆け込み寺建立のベトナム人尼僧、一世一代の決意
「大丈夫かなぁ。これで私の口座も空っぽ」
銀行の窓口で、通帳を手にベトナム人尼僧のティック・タム・チーさん(46)は不安を漏らした。東京都足立区に、日本に暮らすベトナム人たちの駆け込み寺を建立するため、地盤の基礎工事代など5千万円を建設会社に支払った日のことだ。
寺の建立を計画しているのはJR綾瀬駅から徒歩約15分の、大きな公園に面した住宅地だ。
これまでは埼玉県本庄市の山あいにある「大恩寺」を拠点にしてきた。JR本庄駅から車で約25分。コロナ禍で大勢の技能実習生や留学生たちが仕事や住む場所を失った2020年以降に計2068人を保護し、帰国までの手助けをした。
ほかにも、タム・チーさんのスマートフォンには日本で様々なトラブルを抱えた人たちから、ひっきりなしに連絡が入る。事件や事故、病気、自殺……。今も、毎月5~10件の葬儀を執り行う。
労働力としてのベトナム人の若者が増えれば増えるほど、日本で命を落とす人の数も増えていくさまを、目の当たりにしてきた。
悩みを抱えた人たちがもっとアクセスしやすい場所に、東京に寺をつくりたい――。
一念発起し、「東京大恩寺」の建立を決意したのは3年前だった。
在日ベトナム仏教信者会の会…
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- 【解説】
ベトナムの尼僧、ティック・タム・チーさんと大恩寺の活動についての続報です。既報は以下。継続的に追って、報じていますね。 ・「技能実習生の駆け込み寺、大恩寺 ベトナム人住職の思い」(朝日新聞デジタル2021.10.26) https://di
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