在野の仏像追究者の活動に光、「最古級」資料も初公開 奈良大博物館
在野の立場で、奈良で仏像などの魅力を発信した知る人ぞ知る人がいた。故・太田古朴(こぼく)氏。その偉業を紹介する企画展が、奈良大学博物館(奈良市)で開かれている。いにしえの仮面芸能に使われた貴重な資料も初公開している。
太田氏は1914年、吉野に生まれた。私設の研究所を主宰するなどして、仏像や石造物を独力で調査。修理や研究を続けて、2000年に亡くなった。
企画展は、仏像研究で知られる大河内智之・奈良大准教授が担当。太田氏の代表的な仏像修理や研究の活動を紹介している。文化財保護のあるべき形を考える機会にしてもらいたいという。
仏像には、経典や「胎内仏」と呼ばれる小さな像などが納められている場合がある。
伝香寺(奈良市)の地蔵菩薩(ぼさつ)立像の図面は、像の頭や足などに納入されているのが分かる。いまは仏像もX線CTスキャンで調査することが知られているが、それを先取りするような太田氏の活動ぶりが伝わる。円成寺(同市)や金峯山寺(吉野町)などの像の納入状況を示した資料も見ものだ。
太田氏が依頼を受けて、1970年代に調査と仏像修理をした和歌山・高野町細川地区の文化財も紹介している。
注目は、太田氏の著作で「能面等」として紹介されていた細川八坂神社の仮面群だ。所在が不明となっていたが、2022年に神社の土蔵で再発見された。
4面の「翁系面(翁・三番叟(さんばそう)・父尉(ちちのじょう)・延命冠者)」のセットは、室町時代前期にさかのぼるものとされる。大河内氏によると、「現存最古級」。高野山麓(さんろく)でその時代に、古式の翁舞(式三番)が行われていたことを示す重要な資料という。
企画展は27日まで(21日休み)だが、オープンキャンパスのある28日も見ることができる。入場無料。問い合わせは同博物館(0742・44・1251)へ。