7月28日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。
永田和宏選
どちらかを選ばねばならぬアメリカと選べぬ日本どちらが不幸か(朝霞市)岩部 博道
二階級特進しても〝上等兵〟伯父の墓標を蟻這いのぼる(神戸市)松本 淳一
意味不明なりし政見放送を真面目に必死に手話通訳者は(八王子市)額田 浩文
☆辺野古にも南西シフトにもふれず首相は追悼すませ帰京す(宇都宮市)手塚 清
島よ帰れ島を還せと鐘鳴らす海霧ふかき納沙布岬(仙台市)沼沢 修
傘寿まで「ご新造さん」と呼ばれてた祖母は身近な明治であった(さいたま市)石田 恵子
単三が十本あれば我が余生全て刻める柱の時計(枚方市)細美 哲雄
引つ越して白髪も増えて歌詠んであなたの知らぬ今のわたくし(豊中市)夏秋 淳子
この世には何も持たずにやって来て何も持たずに去って行くだけ(筑紫野市)二宮 正博
「C線上のアリア」から目が離せない私も言ったセリフ飛び交う(千葉市)高橋 好美
【評】岩部さん、バイデンかトランプ。どちらかを選ばねばならぬアメリカも大変だが、選択肢のない日本はもっと不幸だと。松本さん、命と引き換えの二階級特進。二等兵としての伯父の死を思う。額田さん、私も見るたびに申し訳ない気がする。
馬場あき子選
尻尾欠け売れぬトカゲを次男…