「このままでは迷惑施設に」阿武隈川遊水地計画で3町村長が国に要望
2019年の台風19号(東日本台風)で氾濫(はんらん)した阿武隈川の遊水地整備計画で、農地や集落が移転対象になっている鏡石・玉川・矢吹の3町村長が30日、整備主体の国土交通省福島河川国道事務所(福島市)を訪れ、移転を余儀なくされる住民の負担軽減や完成後の適切な維持管理などを求める要望書を提出した。
遊水地は、阿武隈川が蛇行する3町村の流域に造られる。総面積約350ヘクタールの田畑などを掘削し周囲を堤防で囲む。3町村で約150戸が移転することになり、土地を手放す地権者は約800人。国は用地買収を進めており、進捗(しんちょく)率は全体の約20%。2028年度に完成する計画だ。
要望書は、住宅移転や農地転換を強いられる住民に対する補償や遊水地完成後の平常時の利活用について、国の措置が不十分だと指摘。関係法令の柔軟な運用などによる損失補償や営農再開の支援を求めた。
矢吹町の蛭田泰昭町長は、用地交渉を終えた田畑が手入れされず荒れ放題となり、クマなど野生生物の生息域拡大を招いていると指摘。「このままでは大変な迷惑施設になりかねない。維持管理や利活用は、国が責任をもって行ってほしい」と求めた。
対応した望月貴文所長は「完成後は地域の意向をふまえ農地としての利活用も含め検討し、適切な管理に努めたい」と応じた。