日本の野党は「任せてもいい」? 14年ぶり政権交代の英国で考えた

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ロンドン=藤原学思
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 政権交代に欠かせない要素はなにか。信頼するに足りる野党だ。それを思い知った。

 7月4日、英総選挙の投票日当日。駐在先であるロンドンから1時間あまり電車に乗り、南東部ジリンガムを訪れた。

 1979年の総選挙からずっと、ここで勝った党が政権を担っている。ジリンガムの有権者の意見を聞くことは、結果の予測に役立つと考えた。

「政権から落としたい」

 地元の教会から、投票を終えた市民が出てくる。私は記者証を見せ、声をかける。「どこに投票しましたか? なぜ?」

 セラピストのローラ・ボールドウィンさん(39)は労働党に投票した。「いまの政治に満足できない。保守党を政権から落としたいから」。理由は明快だった。

 労働党を強く支持しているわけではない。ただ、保守党に勝ってほしくはないし、勢いのあるポピュリスト政党に議席を与えるのもはばかられる。そんなことも口にした。そして、それはボールドウィンさん一人ではなかった。

 結局、労働党はジリンガムを含め、650議席のうち412議席を取って大勝。保守党は121議席と、歴史的大敗を喫した。14年間政権の座にあった保守党の支持率はこの1年半ほど、20%台前半と低迷していた。

「与党に不満」日英で共通するけれど…

 日本に目を向けると、自民党政権が11年半続く。朝日新聞が4月に実施した世論調査では、今後の望ましい政権について「自民党以外の政党による政権」が48%で、「自民党を中心とした政権」の39%を上回った。

 また、6月の世論調査では、自民党の支持率は19%にまで落ち込んだ。一方で、各野党の支持率も10%未満だった。

 こうした結果を見ると、英日…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2024年8月19日17時0分 投稿
    【視点】

     総選挙後、目の向かいがちな政権与党でなく、野党を考える良記事です。  対抗政党って特に夢を託さなくても、与党が失敗したときにそれなりに統治できればそれで充分なのですね。「AがダメならBで仕方ない」程度でもいてくれればよい。  2012年に

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    小林恭子
    (在英ジャーナリスト)
    2024年8月20日0時54分 投稿
    【視点】

    野党の存在を通して英国政治の仕組みを考える、とても良い記事ですね。 筆者は英国に住んで約20年になりますが、総選挙を通じて与野党が何年か毎に交代する形になっているのは、東京大学大学院の小川教授が指摘するように、「英国では二大政党制が約15

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