袴田さん無罪、検察控訴すれば異例対応 地裁は一蹴「3証拠が捏造」

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金子和史 田中恭太 植松敬 聞き手・遠藤隆史
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 三つの捏造(ねつぞう)がある――。事件発生から58年を経て袴田巌さん(88)を無罪とした26日の静岡地裁再審判決は、捜査機関による証拠捏造を認め、再審開始決定の判断よりもはるかに強く踏み込んだ。検察は判決をそのまま受け入れるのか。

 判決が認定した捏造の一つは、再審公判でも最大の焦点だった「5点の衣類」だ。

 衣類については、一度再審開始決定を出した2014年の静岡地裁と、再審開始を決定づけた昨年の東京高裁も、捏造の可能性に言及。高裁は、衣類についた血痕に赤みが残る以上、袴田さんのものではないとして、弁護側の主張に軍配を上げていた。

 それでも検察側は再審公判で、弁護側の鑑定結果などに反論する法医学者ら7人の共同鑑定書を提出。検察側の専門家も法廷で「当時のタンク内の状況が分からない以上、赤みが残らないとは言えない」などと証言した。

 この日の判決は検察側、弁護側双方で計5人の専門家証人の尋問の結果を検討した上で、実際に衣類が見つかったタンクでみそ漬けした場合には「赤みを失う」と判断。衣類を袴田さんが隠した可能性は否定され、捜査機関の者が捏造したとしか想定できない、と結論づけた。

 この衣類のうちズボンをめぐ…

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この記事を書いた人
金子和史
東京社会部|裁判担当
専門・関心分野
事件、司法
田中恭太
国際報道部
専門・関心分野
国際情勢、裁判、デジタルプラットフォーム、独占禁止法
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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年9月27日8時10分 投稿
    【視点】

     私は、鈴木宗男事件に連座して、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、2002年5月14日から2003年10月8日までの512泊513日、東京拘置所の独房に勾留されていました。2003年10月に保釈されるまで、両隣の独房には確定死刑囚が収容さ

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年9月27日9時25分 投稿
    【視点】

    58年という、想像を遥かに凌駕する果てしのない時間の長さを思い浮かべると、たまらない気持ちになる。涙すら出ず、ただただ呆然とするしかない。 もし自分の家族が、親しい友人が、無実にもかかわらず死刑を言い渡されて人生のほとんどを奪われたとすれ

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