「女川原発は停止したままに」 脱原発をめざす首長会議が緊急声明
東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働を前に、市町村長と経験者らでつくる「脱原発をめざす首長会議」の会員らが現地を訪れ、緊急声明を発表した。住民らは自治体が作った避難計画に不安を感じているとして原発は再稼働せず、停止したままにするよう求めた。
会員らは22日に石巻市で学習会に参加し、23日に牡鹿半島にある女川原発の現地を視察。国内初の臨界事故で死者2人と600人超の被曝(ひばく)者を出した1999年のジェー・シー・オー(JCO)事故当時、茨城県東海村長として住民を避難させた村上達也さん(81)は「女川は最も動かしてはいけない原発だ」と言う。
2011年3月の東日本大震災で女川原発は、1号機の電源盤で火災があり、2号機建屋は地下に浸水し、壁にひびが入った「被災原発」。牡鹿半島では地震と津波で住民の避難路も寸断され、通行止めが相次いだ。
女川原発は過酷事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)で、2号機は来年で運転開始から30年になる古い原発だとして「事故が起きれば仙台も消えてしまう」と村上さん。
福島第一原発の事故当時、福島県南相馬市長として市民約6万3千人を県内外に避難させた現市議の桜井勝延さん(68)も「原発が立地する周辺自治体の首長は、原発を再稼働させてはならない」。
南相馬市によると、震災での直接死は636人、原発事故で避難を強いられ、避難で亡くなった震災関連死は521人にのぼる。桜井さんは「避難させられると病気を誘発したり悪化させたりする。必ず命にかかわることが起きる。一番有効な避難計画は、原発を動かさないことだ」。13年半経った今でも、県内外に2900人以上が避難したままだという。
東北電は、堤防の高さを14・8メートルから29メートルに上げたほか、原子炉建屋の耐震性を高め、新たに原子炉冷却用の貯水槽を建設するなどの安全対策に約5700億円を投じて5月末に工事を完了。検査や試験の後、10月ごろに原子炉を起動させ、11月ごろに発電を始める予定だ。震災後、東日本の原発で再稼働は最初のケースになるとみられる。