迫る衆院選 裏金問題の影響は 4選挙区に12人準備 熊本の構図

渡辺淳基 吉田啓 城戸康秀 今村建二
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 3年ぶりとなる衆院選が15日に公示される。熊本県内でも、立候補予定者が街頭に立ち、政策を訴えるチラシの配布を始めるなど、各地で選挙に向けた動きが加速した。各陣営は何を訴えるのか。現時点で予想される4選挙区の構図をみる。

■熊本1区 前防衛相と2新顔争う

 熊本市中央区など都市部を選挙区とする熊本1区。比例復活を含め6回目の当選をめざす自民前職の木原稔氏(55)に対し、立憲民主の出口慎太郎氏(42)、参政の重松貴美氏(35)の新顔2人が挑む構図になりそうだ。

 前回2021年は与野党一騎打ちとなり、木原氏は13万1千票あまりを獲得して立憲の候補者に5万票近くの大差をつけた。その後、昨年には岸田内閣で初入閣を果たし、防衛相に就任。今回の選挙では、その経験や実績を有権者に訴える。政策面では、九州・沖縄を統括する陸上自衛隊西部方面総監部が選挙区内にあることも念頭に、「憲法への自衛隊の明記」「自衛官の待遇改善」などを掲げる。

 立憲民主党県副代表の出口氏は、22年の参院選に立候補した際、1区で約4万4千票を獲得。政権交代による「本気の政治改革」などを掲げる。自民党の政治とカネの問題に対する批判票の受け皿になりたい考えだ。

 参政の重松氏は地元の佐賀県から熊本1区に転身。男の子2人を育てる中で、食と健康、教育などの問題に思いを寄せ、「無党派層や(政治を)諦めている人に、参政党という選択肢があることを知ってほしい」と話している。

1区の予想される顔ぶれ

木原  稔 55自前⑤ 〈元〉防衛相

出口慎太郎 42立新  党県副代表

重松 貴美 35参政新  コンビニ業役員

■熊本2区 40代以下3氏の争い

 自民前職の西野太亮(だいすけ)氏(46)に、共産新顔の奥田木(こ)の実氏(28)と参政新顔の近田(こんだ)茜氏(32)が挑む。

 西野氏は前回、自民で幹事長や派閥の領袖(りょうしゅう)を務めた古賀誠氏らの支援を受けて無所属で立候補。前々回に引き続き、自民長老の野田毅氏との保守分裂選挙を戦い、「世代交代」を訴えて11万票余を獲得。野田氏を約5万票差で破り、初当選した。自民党入りした今回、有明海沿岸道路の早期整備や農林漁業の進化といった地元の関心が高い訴えを掲げ、保守票を取りまとめての得票の上積みを目指す。

 前回衆院選の候補者が1万1千票余を獲得した共産は、20代の奥田氏を立てて若者への浸透に期待する。奥田氏は選択的夫婦別姓制度といったジェンダー平等促進や、法定労働時間短縮、高等教育の学費軽減の政策を掲げ、同世代の友人らがSNSで広報しているという。

 参政は、前回参院選で熊本選挙区の候補者が約7万8千票を獲得。統一地方選では県議、熊本市議などの議席を得た。近田氏は愛知5区での立候補予定からの「国替え」。食と健康、教育といった政策課題を訴えの中心に据える。

2区の予想される顔ぶれ

西野 太亮 46自前① 〈元〉財務省職員

奥田木の実 28共新  党県職員

近田  茜 32参政新  〈元〉小学校教諭

■熊本3区 厚い地盤 自民に挑む

 熊本市周辺の人口急増地と、過疎と高齢化が進む中山間地を抱える3区。8期目をめざす自民の坂本哲志氏(73)に、社民の橋村りか氏(52)と参政の植田貴俊氏(40)の新顔2人が挑む。

 昨年12月から岸田内閣で農林水産相を務めた坂本氏は、地元に戻る機会は限られたが、4市3郡をくまなくカバーする態勢がとられている。共産の候補と一騎打ちとなった2014年と17年の得票率は77%と73%。三つどもえになった前回も71%に達した。

 この厚い地盤に、橋村氏は昨夏、益城町から名乗りを上げた。熊本地震で自宅が全壊し、6年前に17歳で亡くなった娘が医療的ケアを必要とし、様々な壁と闘ってきた経験も踏まえて「いのちを大切にする政治」の実現を訴える。

 植田氏は、参政党が県内で擁立した3人のうち唯一の県内出身者。熊本地震をきっかけに東京からUターン、今年3月まで県職員として勤務した。目の前の課題として「半導体工場の相次ぐ立地が農業基盤を脅かしている」と危機感を訴える。

3区の予想される顔ぶれ

坂本 哲志 73自前⑦ 〈元〉農林水産相

橋村 りか 52社新  児童支援員

植田 貴俊 40参政新  〈元〉県職員

■熊本4区 自・立・維 三つどもえ

 直近の2017、21年とも自民の金子恭之氏(63)と、当時は立憲民主の矢上雅義氏(64)による一騎打ちだったが、矢上氏が維新に転じ、立憲は笹本由紀子氏(59)を擁立した。

 金子氏は00年以来、8期連続当選。岸田内閣で総務相を務め、総裁選では林芳正官房長官を中心になって支えるなど自民中枢とのパイプが強み。各地域の後援会のトップに首長を据え、足元も固める。自民逆風の中で迎える選挙だが、「地域の声を中央に届ける」と強調する。

 1993年に日本新党で初当選した矢上氏は新進、自民と渡り歩き、立憲から挑んだ17年は比例復活したが、21年は落選。再挑戦にあたり「川辺川の流水型ダムは容認」とする姿勢が「ダム反対」の立憲と相いれなかった。維新の基盤はないが、長年の支援者たちが支える。

 笹本氏は、昨年の県議選人吉市選挙区に立候補し、ダム反対派の住民らに支えられた。非自民票が分散するが、矢上氏を含め「既存の政治家では変えられない」と政治不信の受け皿をアピールする。

4区の予想される顔ぶれ

金子 恭之 63自前⑧ 〈元〉総務相

笹本由紀子 59立新  〈元〉渋谷区

矢上 雅義 64維元③ 〈元〉相良村

顔ぶれの見方

 氏名(敬称略)、11日現在の満年齢、党派、新旧別、当選回数(丸数字)、主な経歴の順。並び順は衆院解散時の勢力順。

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この記事を書いた人
城戸康秀
阿蘇支局長
専門・関心分野
地方自治と地方政治のあり方、災害と地域振興
今村建二
水俣支局長|水俣病・環境担当
専門・関心分野
地方政治、環境
2024衆院選

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