デンマークの首都コペンハーゲン。

　「この部屋は、モデルルームです」

　認知症の人たちの支援にあたる認知症センターのリセ・ベスタゴーさんが、部屋のドアを開けた。中は、キッチンと居間、ベッドルームなどがつながる間取りになっていた。

　モデルルームは、認知症の人本人や家族に、日常生活を送る上で役に立つ新しい技術や工夫を紹介する狙いがある。

　たとえば、モデルルームに置かれていたデジタル時計は、文字の部分に触れると曜日や時間帯などを音声で知らせてくれる。認知症の人が布団の重みを感じて安らげるベッド。複雑な機能を備えたものではなく、家族など近しい3人にワンタッチだけでかけられる電話――。

　モデルルーム入り口の扉は、一面が濃い緑で塗られ、郵便受けも再現されていた。自宅から介護施設に移る際、個室の入り口に、見慣れた自宅ドアと同じデザインを転写するサービスを販売する企業があるという。

　福祉国家として知られるデンマーク。認知症ケアはできるだけ早期に発見し、早期に「介入」することに重点が移っているという。

　「この（認知症）センターも…