厳しさ増す漁業、担い手不足に温暖化 魚の分布変わり揺らぐ食卓
記者解説 根室支局長・山本智之、経済部・加藤裕則
日本の漁業を取り巻く状況は、厳しさを増している。農林水産省によると海で取る「海面漁業」の漁獲量は1980年代をピークに減少傾向だ。2023年(概数)は282万トンと過去最低を更新し、ピーク時の4分の1ほどの水準だ。サバやサンマ、サケ類といった日本人の食卓を支えてきた魚種の落ち込みが激しい。
背景には漁業者の不足がある。漁業の就業者数は60年代は60万人を超えていた。ここ数年は12万人ほどにとどまる。高齢化も進んでいるが、収入や将来への不安などから新たな担い手を探すのは難しい。
魚の値段が思うように上がらない一方で、漁船の燃料費などの経費はかさむ。個人で営む漁師の平均所得は257万円(22年)で、一般のサラリーマンの平均を下回る。農水省は補助金も出して新たな漁業就業者を集めようとしているが、効果は限定的だ。
そこに追い打ちをかけそうなのが、海の環境の変化だ。漁獲量は近年、「温暖化」によって大きく左右されるようになった。
ポイント
日本の海面漁業の漁獲量は担い手不足もあって、ここ数年は過去最低を更新している。地球温暖化の影響も深刻で、取れる魚の種類や量が大きく変わりつつある。国は漁業者の利害を調整しつつ、漁獲量の制限などで資源を適切に管理すべきだ。
典型例は朝食の定番としてお…