北朝鮮はなぜ公開処刑を認めたのか 識者「背景に戦後秩序の弱体化」

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聞き手・牧野愛博
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 各国の人権状況を調べる国連人権理事会の「普遍的・定期的レビュー」(UPR)が7日、スイス・ジュネーブで開かれ、北朝鮮が政治犯収容所の存在と公開処刑の執行を事実上認めました。北朝鮮はこれまで、いずれも否定してきましたが、なぜ一転したのか。2013年から17年に韓国の北韓(北朝鮮)人権国際協力大使を務めた李政勲(イジョンフン)・延世大教授は、ロシアのウクライナ侵攻など戦後秩序の弱体化が背景にある、と指摘します。

 ――米韓などのメディアによれば、UPRに出席した北朝鮮の中央裁判所幹部は、政治犯収容所の存在について直接的には否定しつつも、反国家犯罪者は一般犯罪者と分離収容していると主張し、事実上、存在を認める発言をしました。公開処刑についても、被害者家族の要求がある場合、18歳以上の死刑囚に例外的に執行していると認めました。

 北朝鮮の当局者が、言い間違えることはありません。すべて事前に計画した意図的な発言です。しかも、人権問題に関する発言は、金正恩(キムジョンウン)総書記の許可なしにはできません。

 私は大使在任中、何度もジュネーブを訪れ、北朝鮮代表部の発言を聞く機会がありました。彼らはいつも、壊れたテープレコーダーのように、同じ話を繰り返していました。決まり文句は「共和国は、人権侵害の存在しないパラダイスだ」というものでした。逆に、米国こそ黒人などに対する人権侵害が多発していると攻撃していました。

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 ――北朝鮮に対するUPRは4年半ぶりです。

 本来、北朝鮮にとって人権問…

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島