原稿はタマネギを刻みながら 全員が子育て中、二足のわらじの出版社
中嶋周平
机の上にかわいらしいイルカやネコなどのキャラクターを描いた鮮やかな紙が積み重なっている。マンションの一室が「まさ出版」代表の安井雅子さん(51)の自宅兼オフィスだ。
まさ出版のメンバーは全員、他に仕事を持ち、子育てをしている母親や父親。モットーは「ゆっくり、のんびり」「ワクワクすることだけやる」だ。
安井さんは福岡県出身。高校時代は医師をめざしていたが、医学部受験に失敗し、教育学部に進学した。
今度は教師をめざしたものの、教員採用試験は不合格。結局、友だちの提案で地元のテレビ局のキャスター募集に応募し、想像すらしなかったマスコミの世界で編集スタッフとして働くことになった。「私の特技は気持ちの切り替えが早いこと」と笑う。
テレビ局で番組のコーナーの原稿を書くうちに「自分の得意なことは文章だ」と思い定め、26歳で上京。出版社に転職し、健康や教育に関するテーマの記事などを書いた。
結婚と出産を機に独立。フリーライターとして雑誌や新聞に寄稿し、「ライターが唯一の天職」と感じていた。
転機は、3人目の出産だった。
仕事と子育ての両立「限界超えた」
上の2人の子どもを産んだと…