なぜ、尹錫悦大統領は突然会見したのか 韓国メディア幹部が得た確信
韓国の国会は7日夜、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する弾劾(だんがい)訴追案の採決を行いましたが、与党議員のほとんどが退席したため、不成立となりました。進歩(革新)系のハンギョレ新聞の元東京特派員で、韓国内の対立の源流を追った著書もある吉倫亨(キルユニョン)・同紙論説委員は「これから長い政争と混乱が続くだろう」と語ります。
――7日の弾劾訴追案を巡る政界の駆け引きをどうみましたか。
3日夜の尹氏による非常戒厳の宣布と4日未明の解除を経て、5日夜までは「1~2票足りずに否決」という流れでした。弾劾決議には国会(定数300)の3分の2の賛成が必要です。保守系与党・国民の力(108議席)が党の方針として弾劾否決を決め、造反者は8人に達しないとみていました。
ところが、国民の力の韓東勲(ハンドンフン)代表が非常戒厳で逮捕される対象になっていたという情報が流れ、韓氏が6日朝に尹氏の職務執行停止を求める考えを示したため、一気に可決の流れに傾きました。
――尹氏が7日午前10時から行った国民向けの談話で、可決の流れが再び否決に変わったのですか。
尹氏の記者会見を聞きながら、「弾劾案の否決を前提に話をしている」という印象を持ちました。尹氏は政権運営を党に任せることを条件に、党から弾劾案否決の言質を取ったのでしょう。
尹氏にとって一番重要なのは、自分の身の安全です。尹氏は「法的・政治的な責任を避けない」と語りましたが、内乱罪が認められれば死刑もあり得ます。尹氏は党と合意して、造反票が8票に達しないと確信したから、会見して謝罪したと思います。
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――尹氏は非常戒厳を出す際…