第1回「この空き家、あなたは相続人です」突然届いた手紙 詐欺?…事実は

有料記事この不動産だれのもの? 大相続時代

山田史比古
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 これって、新手の詐欺か何かか?

 中部地方で暮らす男性(49)は、突然届いた封筒を開け、そう思ったという。

 近畿地方の自治体名が書かれた封筒。自宅に届いたのは、2024年5月の下旬ごろだ。

 首長名の手紙が入っていた。

 「空家(あきや)等の適正管理について(依頼)」

 そう題された手紙の宛名となっている自分の住所と名前に、間違いはない。

 「あなたが相続人となられている空家について、近隣住民から通報がありました」

 屋根に穴が開き、草木が繁茂しており、このままだと近隣に影響しかねない。修繕か、撤去、解体が必要な状態だという。

 所在地が書いてあった。写真も複数、添えられていた。確かに傷みが激しそうだ。

 しかし、何の心当たりもない。まったく知らない家だ。

 知らない人の名前も書かれていた。

 「あなたの母の父の姉にあたる」

 その人の姓は、母の実家の姓とも異なっていたが、男性は「相続人」なのだという。

 言われてみれば、近畿地方のその府県に、遠い親族がいると聞いたことがあった。

 しかし、自分が空き家の相続人だとは。

 手紙には、ご丁寧にも「突然の連絡で驚かれたかと思いますが」として、「戸籍を調べて血縁関係を確認」したと書いてあった。

 どうやら、何かの間違いではないらしい。

 そして、この状態が放置された場合、自治体が空き家を「管理不全空家」と認定する可能性があり、そうなると、固定資産税が増える可能性もある、と記してあった。

 その知らない家の固定資産税を、男性がいま払っているわけではないが、放置するとまずいことになりそうなことは伝わった。

大都市をのぞけば不動産の価値が下がって「負動産」とも言われ、相続登記がされなかった「所有者不明」土地も問題に。そして迎えた前例のない多死社会は、前例なき「大相続時代」でもあります。相続の現場を訪ねます。

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この記事を書いた人
山田史比古
くらし報道部|社会保障・福祉担当
専門・関心分野
社会保障・福祉、住まい、身寄り問題、相続