苦しい時もあるけれど 公園暮らし20年 手放したくないものとは

有料記事ウェルビーイング・働き方

聞き手・田中聡子
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 将来のために勉強して、働いて、お金を稼いで、老後資金をためて――。人生は何かに追われ続けるようなしんどさがあります。アーティストのいちむらみさこさんは、そんな生き方を抜け出し、東京都心の公園で2003年からテント暮らしを続けています。何を失い、何を手に入れたのでしょうか。いちむらさんのテントの前、静かな木陰で話を聞きました。

 ――テント村に20年あまり。長いですね。

 こんなに長く住むとは思っていませんでした。ここでの暮らしを始めたころは、将来のビジョンはなかったのです。ただ、何が理由でそうなのか明確ではなかったですが、以前の暮らしを「嫌だ」と思う気持ちはずっとありました。

やりたくないのにやらされている

 ――何が嫌でしたか?

 当時の私は、へとへとになって働いていました。美術大学と大学院を終え、美術関係の仕事をしていました。バイトをいくつも掛け持ちしたこともあります。それでも低所得で、毎月、家賃と保険料、税金などを引かれた後の口座の残高を見て愕然とする。職場では周りと競争させられ、お互いいい関係を築けません。友人たちもしんどくなっていて、うつになったり、私自身も死にたい気持ちになったりしました。

 だけど「社会というのはこう…

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