第16回「ぼっち」と思われたくない…広がるひとり空間 遮断は安心?分断?
連載「1995年からの現在知」
1995年は、建築敗北の年ではなかったか、と考えてきた。1月の阪神・淡路大震災では、民家に加え、堅牢に見えた近代的なビルや高速道路までが倒壊した。3月にはオウム真理教による地下鉄サリン事件も起き、信者たちの拠点であった「サティアン」と呼ばれる建物が注目された。窓のほとんどない、工場や倉庫のように巨大な「閉じた箱」の建物は、建築デザインの否定にも思えた。
あれから30年、今また街やオフィスの中でひとり用の閉じた箱を見かけるようになった。コロナ禍を経て広がった「テレワークブース」などと呼ばれる存在だ。
「ひとり空間」に詳しい社会学者の南後由和・法政大教授は、「相手もブースにいる可能性があり、ひとり空間どうしがネットで接続されている点は新しい」と指摘する。2025年の「閉じた空間」について聞いてみた。
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――コロナ禍以降、駅や空港、商業施設などに、リモート会議などで使えるテレワークブースと呼ばれる電話ボックスのようなブースが次々に置かれています。「ひとり空間の社会学」の著者として、どのように分析、評価されていますか。
「歴史的に東京などの大都市部には、匿名性の高い個人が集まってきました。そうした人のためのプライバシーを守る空間として元々都市部には、例えば鍵つきの個室のホテルのようなものが多かった。さらに近年は、コロナ禍以前から、カプセルホテルやひとりカラオケなどの空間があり、ラーメン店などの飲食店でも間仕切りが設置されることが多い。とりわけ東京は、その種類が多く、駅周辺に集積していました」
「1979年に登場したヘッドホンステレオも、周囲の音を遮断し、目に見えない仕切りを作って『ひとり空間』を持ちながら都市空間を歩いていたといえます。さらに2010年代以降にスマートフォンが普及し、そうした形での『ひとり空間』が増えています」
「今やカフェでスマホやパソコンで作業をするのは日常の風景なのですが、テレワークブースはまさに仕事に結びついた『ひとり空間』だと思います。コロナ禍では職種に限らず、リモート会議やリモートワークを経験した。この場合、視覚よりも聴覚をどう周囲から遮断するかが重要で、街にあるブースも視線はもちろんですが音を遮断することに対応しています。相手もブースにいる可能性があり、ひとり空間どうしがネットで接続されている点は新しいといえます」
「今では、就職活動のオンラ…