第4回魔窟ビルにほれ、はぐくまれて お笑い愛する人の居場所作った元芸人

有料記事消えゆく魔窟 「味園ビル」に魅せられて

川村さくら 動画制作・佐藤慈子
【動画】消えゆく魔窟 味園ビルに魅せられて「なんば白鯨」=佐藤慈子撮影
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 「味園にほれたのが最大の弱みなんすよ」。元芸人で、味園ビル2階で4店舗を営んできたB・カシワギさん(45)。一部をピンクに染めた髪に、120キロほどの大きな体。見るからにただ者ではないこの人は「味園ビルの自由によって店も自分も育てられた」と話した。

魔窟。大阪・ミナミの味園ビルはそう呼ばれました。日本最大級のキャバレーやホテルを擁すも、既に閉鎖。個性的な飲み屋が集まった2階もほぼ全ての店が昨年末で営業を終了。令和に残った昭和のビルを記録しました。

 大阪府岸和田市の実家は学習塾だった。「勉強はようやらされました」。中学校から進学校に進み、学校外の時間も塾で過ごした。

 塾で学校の出来事をおもしろおかしく話していたら、高校生の女の子から「あんたの話はおもろいけど、勉強して!」と言われた。それがうれしくて、しゃべりのおもしろさについて考えるようになり、ラジオにはまった。

 親を納得させるため、大学まで進んだ。実家から通える大学を卒業後、あこがれていた芸人が所属する松竹芸能養成所に入った。

 だが、芸人の世界で求められるのはしゃべりではなく、ネタのおもしろさだった。ネタを作れ、ファンを作れ。それがしっくりこなかった。笑福亭鶴瓶さんのようにただしゃべっているのにおもしろい。そんな存在になりたかった。

スナック去ったビルは無法地帯に

 2000年代には芸人仲間の…

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この記事を書いた人
川村さくら
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
人権、差別、ジェンダー、サブカル
佐藤慈子
大阪社会部
専門・関心分野
子ども・自然・動物・食・福祉・和文化・芸術など