第4回「野球とは言えない」イチロー氏の違和感 高校球児に伝えたいこと
母校のグラウンドは想像していたよりも変わっていた。
ひたむきに汗を流す選手たちの姿は30年以上前と変わらない。寮の部屋や食堂もあの頃と同じ。ただ、その練習風景はまるで違った。
昨年11月。現役引退後、初めて愛工大名電高(愛知)の野球部を訪れたイチローさんは、驚きを隠せなかった。
「すごい施設。今どきだよね」
ブルペンには投球の回転数や変化量などを計測できる弾道測定器「ラプソード」が設置され、打撃練習では打球速度や打球角度が手元の端末に映し出される。
投げる、打つ、走る。すべての動きが最新機器によって数値化されていた。
ただ、その表情には険しさも潜んでいた。
「データでがんじがらめになって、選手それぞれの感性が消えていないか」。そう感じたからだ。
後輩たちが目先の数字ばかりを追い求め、データによって野球が管理されるのではないか――。
イチローさんは2019年の現役引退後、大リーグ・マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターとして試合や練習を見てきた。そこで感じるのが「データ野球」の進化だ。
科学の発達で投手の球種、打者の打球方向などの傾向も可視化され、それに基づいて監督やコーチから作戦の指示が出される。選手は試合中もベンチで端末が手放せなくなった。
そんな手法が日本のプロ野球だけでなく、アマチュア野球にも浸透してきた。愛工大名電は高校野球界では先んじて最新機器を取り入れていた。
イチローさんはデータを否定…
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