手に友人の遺影・元甲子園V球児 震災から14年、20歳に 岩手

東野真和 佐藤善一
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 よく遊んだ友達の遺影を手に。自ら司会や受付を担って―― 岩手県内の多くの自治体で12日、成人の門出を祝う式典が開かれた。県教育委員会によると、式典の対象者は1万973人。県外からも多くの若者が帰省した。それぞれの思いを胸に、友人や恩師との再会を楽しんだ。

 大槌町の「二十歳のつどい」には55人が参加した。小学校入学前に東日本大震災が起きて仮設校舎で勉強したり、高校ではコロナ禍で修学旅行が取りやめになったりした年代だ。

 参加者の中には、震災で亡くなった友人の遺影を持つ人もいた。北上市の専門学校に通う小笠原瞳さん(20)は、同じ幼稚園でよく遊んだ渡辺ひなたさん(当時6)の遺影とともに出席した。同じ小学校に入学するはずだったが、それはかなわなかった。

 「同じピアノ教室に通っていて、おしゃれで、みんなに優しい明るい子でした。一緒に式に出て、お話をたくさんしたかった」と笑顔の写真を見ながら話していた。

 岩手県釜石市の「はたちのつどい」は12日、市民ホールで行われ、専門学校で学ぶネパール人や水産加工業で働くインドネシア人らを含む約200人が出席した。

 有志による郷土芸能の虎舞が披露された後、2022年の全国高校野球選手権大会で優勝した仙台育英の副主将だった洞口優人さん(20、現・富士大)が代表で抱負を述べた。

 洞口さんは震災当時、保育園児だった。自宅が津波で流され、亡くなった同級生もいた。虎舞にも加わった洞口さんは「(震災後)支え合い、励まし合って少しずつ前に進めた経験が今の私の強さの基盤。困難も自分の力で乗り越え、明るい未来を切り開けると信じている」と力強く話した。つどいの後、「長く野球を続け、将来は釜石に貢献したい」と語った。

 雫石町で開かれた「二十歳のつどい」には、115人が集まった。約10人の実行委員会が司会や受付など運営を担い、中学時代の思い出写真をまとめたスライドショーで盛り上げた。

 実行委員長の藤村拓未さん(19)は盛岡市内の専門学校2年生。今春から薬王堂に就職する。スライドショーも約800枚の写真から約200枚を選び、音楽をつけて仕上げた。「地元で働きたいと思い、会社を選んだ。久しぶりに会った友人も多い。スライドで盛り上がってよかった」

 司会を務めた大学生の上路華子さん(20)は東京、羽上愛那さん(20)は北海道から駆けつけた。上路さんは「やっぱり雪を見るとうれしい。将来のことはじっくり考えたい」。羽上さんは「卒業したら岩手で小学校教諭になるのが夢。釧路に比べると岩手は暖かい」と笑った。

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この記事を書いた人
東野真和
釜石支局長|震災復興・地方自治担当
専門・関心分野
震災復興、防災、地方自治、水産業