政府、国連女性差別撤廃委への拠出停止へ 皇室典範の改正勧告に抗議

里見稔
[PR]

 外務省は29日、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)を、日本の拠出金の使途から除外することを決め、国連側に伝えたことを明らかにした。同委員会が昨年10月、「男系男子」の皇位継承を定めた皇室典範の改正を勧告したことへの抗議の意図を示す狙いで、こうした措置は異例という。

 外務省の北村俊博外務報道官が記者会見で発表した。会見などによると、日本政府は同委員会の事務を担う国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)へ毎年、拠出金を出している。その使途から女性差別撤廃委員会を除くように27日に同事務所に伝えた。毎年の拠出金は、当初予算ベースで2千万~3千万円だという。

 ただ、外務省が確認した2005年以降で、同委員会に日本の拠出金が使われたことはなかった。北村報道官は「拠出金の一部でも(同委員会に)使われないことが確保され、日本政府の立場をより明確に示すことになる」とした。今年度に予定していた委員の訪日プログラムも実施を見送るという。

 同委員会の勧告について、日本政府は「皇位につく資格は基本的人権に含まれていないことから、皇室典範において皇位継承資格が男系男子に限定されていることは女性に対する差別に該当しない」「皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項であり、女性差別撤廃条約に照らし、取り上げることは適当でない」としている。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    能條桃子
    (NOYOUTHNOJAPAN代表)
    2025年1月29日12時2分 投稿
    【視点】

    女性差別撤廃委員会とは、女子差別撤廃条約の締約国が差別をなくすためにどういった法制度や施策を実施しているのかを各国から選出される専門家が順番に審査し、改善のための勧告をする委員会です。日本政府はこれまで、民法が定める夫婦同姓の義務付けの改正

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    南野森
    (憲法学者・九州大学法学部教授)
    2025年1月29日12時36分 投稿
    【視点】

    皇位継承資格が皇室典範により男系男子に限定されていることが憲法の男女平等原則に違反するか否かについては、憲法学においても議論があります。記事で紹介されている日本政府の立場のように、天皇・皇族の人権は憲法のいわば「飛び地」であり、憲法の男女平

    …続きを読む