永瀬拓矢九段 王座失冠後の心「藤井聡太さんと戦い、見えた色」
将棋の永瀬拓矢九段(31)が9日、藤井聡太名人・竜王(21)との死闘の末に失冠した王座戦五番勝負(8月31日~10月11日)の終幕から約1カ月が経過した現在の心境を語った。
8日午前10時から将棋会館(東京都渋谷区)で第82期名人戦・A級順位戦5回戦の広瀬章人八段(36)戦に臨んだ永瀬九段は、やや劣勢のまま突入した最終盤の競り合いを制して今期順位戦を3勝2敗で折り返した。終局は午後11時57分。感想戦が終了すると時刻は9日の午前1時を指していたが、朗らかな様子で取材に応じた。
史上初の八冠独占を目指した藤井名人の挑戦を受けた王座戦では第1局に先勝。タイとされた後の第3、4局はいずれも勝勢になったが、いずれも最後の最後に逆転負けを喫し、1勝3敗で王座のタイトルを失った。
「(王座戦を終えた後の1カ月で)驚いたことは2点あります。想像以上に堪(こた)えたことと、想像以上に立ち直りが早かったことです。そんな人はなかなかいないのではないでしょうか。起伏が大きすぎて」
苦いはずの記憶も、いつものように声を高らかに笑いながら振り返る。
「(直後でメンタルが)落ちていた時は技術的にも落ちていたと思いますけど、もう今は普段通りに将棋の勉強に取り組めています。経験できたことは、これからの人生において役に立つものだと思っています」
失冠当夜の談話の中で永瀬九段は「藤井さんに教えていただいて、番勝負が始まる前と後ではだいぶ見えてきたものも違うかなと思います」と明かしている。
見えてきたものとは何か、と問うと、彼から返ってきたのは、印象的で少し不思議な言葉だった。
あれから1カ月。失冠した王座戦の記憶を語る時、永瀬拓矢九段は不思議な言葉を用いた。「色」とはどんな意味なのだろう。勝負の色か、思考の色か。美しい色か、深い色か。対局後の深夜に語ってくれたこと―。
「色、なんですよ。技術的な…