【スピーチ全文】「核のタブー守り続ける努力」ノーベル委員長の訴え

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 ノルウェーのオスロ市庁舎で10日、ノーベル平和賞日本原水爆被害者団体協議会日本被団協)に授与された。ノルウェー・ノーベル委員会のヨルゲン・ワトネ・フリドネス委員長によるスピーチの内容は次の通り。

 「私たちの前途には、もし私たちが選べば、幸福や知識、知恵の絶え間ない進歩が広がっています。私たちはその代わりに、自分たちの争いを忘れられないからといって、死を選ぶのでしょうか? 私たちは人類の一員として、同じ人類に対して訴えます。あなたが人間であること、それだけを心に留めて、他のことは忘れてください。それができれば、新たな楽園へと向かう道が開かれます。もしそれができなければ、あなた方の前途にあるのは、全世界的な死の危険です」

 1955年にバートランド・ラッセルやアルバート・アインシュタインをはじめとする世界の著名な知識人たちは、このような問いを投げかけました。その有名なマニフェストは、核戦争の危険性を世界の指導者たちに訴え、国際紛争を平和的に解決する方法を模索するよう促しました。今日、私たちは改めて自問しなければなりません。私たちは人間性を忘れてはいないでしょうか? 人類は光に向かって歩む道を選んだのか、それとも破壊と死への道を歩み続けるのでしょうか?

 ラッセルとアインシュタインがこのマニフェストをしたためた時、アメリカの原爆が広島と長崎に落とされてから10年の月日が流れていました。そこでは12万人あまりの住民が殺されたのです。それと同じくらいの人々が、その後数カ月から数年の間に、やけどや放射能障害によって亡くなりました。これらの都市はほぼ完全に破壊され、社会的・経済的崩壊をもたらしました。65万人近い生存者の多くは、精神的トラウマや身体的苦痛と闘ってきました。彼らは発言の場を与えられず、ないがしろにされ、差別され、経済的な権利と自分たちの体験を認めてもらうためにも闘わなければなりませんでした。

 広島・長崎の被爆者による草の根運動である日本被団協が、核兵器のない世界の実現に向けた努力、特に核兵器が二度と使われてはならない理由を身をもって立証してきた功績により、2024年のノーベル平和賞を受賞することになりました。日本被団協の受賞は、ノルウェー・ノーベル委員会がこれまで核軍縮軍備管理の提唱者たちに授与してきたそうそうたる平和賞のリストに加わるものであります。受賞者たちは、さまざまな形で核兵器の脅威を減少させることに貢献してきました。これまで13回にわたる平和賞が、全面的または部分的にでも、このような平和運動に携わる人々に授与されてきました。ノルウェー・ノーベル委員会は、その度に核兵器に対する警告を世界に発してきました。今年、この警告は例年よりも重要です。

 2025年が近づくにつれ世…

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