ひとり親世帯に、つくばみらい市産米を 市がCFで寄付呼びかけ
茨城県内有数の米どころとして知られるつくばみらい市が、全国のひとり親家庭を支援する民間主導の取り組みに今年度も参加する。自治体(ガバメント)が寄付を募る「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」と呼ばれる手法で資金調達を進めるために、ふるさと納税制度を活用する。今年度からは返礼品として、新たに農業体験の機会を提供することにした。
市の取り組みは4年目。集められた寄付金を元手として、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都)に登録されたひとり親家庭に、市内の生産者が栽培した米5キロを贈る。市によると、これまで3回の募集で約2200万円の寄付が寄せられ、約61トンの市内産米を約1万2300世帯に贈った。昨年度は大口寄付が相次ぎ、目標金額を大きく上回る約900万円が集まった。
ふるさと納税に伴う寄付金控除は適用されるが、これまで返礼品は用意してこなかった。市外在住の寄付者への謝意を示すため、「モノ」に代えて市内の田んぼで春の田植えや秋の収穫を体験してもらう。ひとり親家庭を支援する目的に賛同し、毎年寄付するリピーターも多いという。収穫米の一部を寄付者に進呈することも検討したい、としている。
担当者は「寄付の申し込み時点だけでなく、1年間を通じてひとり親家庭支援に対する思いを強くする機会にもなる」と意義を話す。
今年度の目標金額は前年度と同じ400万円で、募集期間は来月末まで。17日までに80人以上から約150万円の申し込みが寄せられている。前年までに比べ、出足は良いという。問い合わせは市秘書広報課(0297・58・2111)。
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地域の抱える課題解決を目的に、自治体がふるさと納税制度を通じて資金を集める「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」の取り組みは県内でも浸透しつつある。
下妻市は現在、飼い主がいない猫の不妊・去勢手術に使う費用などに充てることを目的にしたGCFを実施中だ。市内では、繁殖で増えた野良猫による糞尿(ふんにょう)やごみ荒らしなどの被害が各所で確認され、車にひかれ収容された猫が2023年度は146匹にのぼるなど、社会問題になっている。猫による被害や猫自身の交通事故を減らす「共生」に向けた新たな取り組みで、130万円を目標に、来月14日まで寄付を募っている。神栖市や鹿嶋市は飼い猫や飼い犬を主な対象にした同様の取り組みをしている。
大子町は全国から生徒を呼び込んで町の活性化につなげようと、県立大子清流高校の教育環境の充実を目的としたGCFを実施中だ。目標額を500万円に設定した。
GCFは寄付金の使途を明確にする点で、いわば「見える化」した事業だ。ふるさと納税をめぐる自治体間の返礼品競争に巻き込まれず、寄付者の賛同を得やすい利点がある。自治体財政が厳しさを増すなか、新たな行政ニーズに対応する資金調達の手段として広まる可能性もある。