気象集誌. 第2輯
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100 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
Article
  • SISWANTO, Gerard van der SCHRIER, Bart van den HURK
    2022 年 100 巻 3 号 p. 475-492
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/26
    [早期公開] 公開日: 2022/02/08
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    電子付録

     ジャカルタにおける1日より短期間の極端降水には、局地的な気温、季節的な熱帯モンスーン循環、その他の環境要因に関連した傾向がある。1900年から2010年の間の81年分の時間雨量解析から、雨季の短時間降雨イベントの回数がほぼ倍増したことを示す。最近数十年の降雨は、それ以前の数十年と比較して強度は強く、継続時間は短いことがわかる。これらの短時間降雨は通常午後から深夜にかけて、または早朝に発生する。最近約100年間の短時間降雨特性の変化の一因は、ジャカルタ市街地の地表環境の変化によるものと考えられる。近年の気温上昇と地表面舗装による乾燥化は、大気中の水分量のわずかな上昇と相まって、大気対流を激しくしている。2002~2016年の雨量計データと高層気象観測の比較から、都市化による市内地表面温度上昇とそれに伴う大気水分増加により対流有効位置エネルギー(CAPE)が増加し、強い降水の発生が促進されることが明らかになった。気温上昇に伴う雨量増加がクラウジウス・クラペイロン(CC)関係式から予想される飽和水蒸気量増加以上になるのは、朝の地表面すぐ上の大気の温度と水分量の増加に起因している。このような超CC関係は、地上気温の比較的狭い範囲で現れる。本研究の結果は,極端な朝方の降水量の強化、および局地的な温暖化に対応して日周期対流極大時刻が夕刻から夜間・早朝にずれてきたという先行研究結果と一致している。対流が活発で降水量が多く河口に位置するジャカルタのような都市では、整備された降雨データベースが市街地洪水早期警報に極めて重要である。

  • Md. Rezuanul ISLAM, 佐藤 正樹, 高木 泰士
    2022 年 100 巻 3 号 p. 493-507
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    [早期公開] 公開日: 2022/02/03
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    J-STAGE Data

     本研究では、1980年から2019年までの潮汐記録と上陸した熱帯低気圧(TC)のベストトラックを調査し、東京を含む日本中央部の沿岸地域における高潮偏差の変化を明らかにした。その結果、年平均の高潮偏差は1980-1999年に比べて最近20年間(2000-2019年)で上昇しており、特に東京湾ではその変化が顕著であることがわかった。また、1980年から2019年にかけて、高潮偏差の増加に対応して、上陸時間帯のTCの風の強さと大きさがそれぞれ強く、大きくなっている。また、より北東方向に進路をとるTCの出現頻度が高くなっていることも東京周辺の高潮ハザードを増加させている要因の一つと考える。さらに、高潮偏差とハザード指数の間に正の相関関係があることも、これらの統計結果を裏付けている。日本中央部の沿岸地域では、現在の増加傾向が続くならば、将来的に極端な高潮現象の発生数が増加する可能性が高い。

  • 茂木 厚志, 渡部 雅浩
    2022 年 100 巻 3 号 p. 509-522
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/26
    [早期公開] 公開日: 2022/02/03
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    電子付録

     日本における夏季の極端高温日は1週間以上持続することが知られており、JRA-55再解析データから求められる日本域平均の850 hPa面気温で測ることができる(本研究ではT850JPと呼ぶ)。異常気象と言えるような高温偏差はしばしば、日本域の気象に影響するいくつかのテレコネクションパターンに伴って生じるが、個々の高温事象に対するそれらの相対的寄与はいまだ定量化されていない。そこで本研究では、3つのテレコネクションパターン、すなわちPacific-Japan (PJ)、circumglobal teleconnection (CGT)、Siberianパターンの、1958~2019年の7、8月のT850JPへの影響を、再解析データから得られる、8日のカットオフ時間スケールでローパスフィルタを施された偏差場を用いて調査した。

     線型回帰分析によって、上記の3パターンのピーク1~2日後にT850JPは大きな正偏差を示す傾向にあることが分かった。この関係に基づいて、T850JPと3テレコネクションパターンの指数との間の回帰分析から求めたパラメータを用いて、重回帰モデルにより日々のT850JP時系列を再現した。再現されたT850JPから、極端な猛暑年においては、3テレコネクションパターンはT850JPの分散の半分程度を説明し、その寄与は同程度であることが分かった。統計モデルは、日々のT850JPの偏差だけでなく、7~8月平均T850JPの年々変動および長期変化傾向も再現できた。PJパターンはT850JPの年々変動に最も大きく寄与しており、これはPJパターンが他の2パターンに比べて長い時間スケールを持つことによるものと考えられる。再現されたT850JPには温暖化トレンドも見られ、CGT指数の上昇トレンドが寄与していることが分かった。このことは、地球温暖化による熱力学的効果とともに、循環場の変化による力学的効果が日本域における高温事象の長期的な増加を説明する一因であることを示唆する。

Notes and Correspondence
  • 水田 亮, 野坂 真也, 仲江川 敏之, 遠藤 洋和, 楠 昌司, 村田 昭彦, 高薮 出
    2022 年 100 巻 3 号 p. 523-532
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/26
    [早期公開] 公開日: 2022/02/18
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    電子付録

     地域的な極端現象の過去から将来への連続的な変化を調べるために、20km全球大気大循環モデル(AGCM)、および60kmAGCMと20km領域気候モデル(RCM)力学的ダウンスケーリングを用いて、20世紀中頃から21世紀末までの連続したシミュレーションを行った。AGCMによる代表的なシナリオについてのシミュレーションは高解像度モデル相互比較プロジェクト実験の手法に従った。また、60km AGCMおよび20km RCMダウンスケーリングでは4つのシナリオを用いたアンサンブル実験を行った。

     全球平均の年最大日降水量(Rx1d)増加率は、シナリオによらず、全球平均の地上気温(SAT)上昇とほぼ比例していた。この関係は低解像度の気候モデルでの結果と整合的で、それより高解像度のモデルでも有効であることを示している。日本の陸域で平均したRx1dとSATについても、10年移動平均で見れば、20km AGCMと20km RCMでよく似た相関関係が見られた。しかし60km AGCMでは、日本の陸域の格子点数が不十分なためノイズが大きく、関係は明瞭ではなかった。これは、アンサンブル実験を使用しない場合には、日本の陸域といった地域スケールのRx1dの連続的な変化は20km程度の解像度により初めて表現可能であることを示唆している。

Article
  • 露木 義, 田村 亮介
    2022 年 100 巻 3 号 p. 533-553
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/03
    [早期公開] 公開日: 2022/02/22
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    J-STAGE Data

     粒子フィルタの最近の発展により、これを高次元系の非線形もしくは非ガウスデータ同化に用いることが可能になった.しかし、アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)の精度を上回るためには,比較的大きなアンサンブルが依然として必要である。本研究ではこれに代わるものとして、ディープニューラルネットワークをEnKFに局所的に埋め込んだ,深層学習に基づくアンサンブルデータ同化法を示す。この方法を深層学習アンサンブルカルマンフィルタ(DL-EnKF)と呼ぶ。DL-EnKFの解析アンサンブルは、DL-EnKFの解析値とEnKFの解析偏差アンサンブルから作成される。DL-EnKFの振舞いを、3つのバージョンのLorenz 96モデルとアンサンブルサイズ10の決定論的EnKFを用いて、完全モデルと不完全モデルの両方のシナリオによるデータ同化実験によって調べた。データ同化における非線形性の強さは、観測データの時間間隔を変えることによって制御した。その結果、このような小さなアンサンブルサイズにもかかわらず、非線形性が強い場合にはDL-EnKFの精度はEnKFより上回り、かつ同化サイクルにおける正のフィードバックによって、深層学習の出力より精度が向上することが示された。また、DL-EnKFによる精度の改善は、学習のターゲットとして大アンサンブルEnKF解析値や不完全モデルによるシミュレーションを用いても、真値を用いた場合と大差ないことが示された。

  • Min-Ken HSIEH, Yu-Wen CHEN, Yi-Chun CHEN, Chien-Ming WU
    2022 年 100 巻 3 号 p. 555-573
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    [早期公開] 公開日: 2022/03/10
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    電子付録

    We applied tracer transport simulations using the Taiwan vector vorticity equation cloud-resolving model (TaiwanVVM) to evaluate the effects of the local circulation associated with the lee vortex and the planetary boundary layer development on the transport and accumulation of the pollutants on a diurnal time scale in central Taiwan. The wind directions of crucial synoptic northeast monsoon are idealized as the initial conditions of the simulations to examine the impact of the lee vortex on the pollutant transport. The primary local nontraffic emission sources are taken as the tracer emission sites so that the experiment results could be a good proxy of the realistic scenarios. With the local circulation over complex topography being resolved explicitly, the impact of the boundary layer development on the tracer transport of the Puli basin is discussed. The simulation results clarify the contribution of the sea breeze and the lee vortex to the tracer transport in central Taiwan. We conclude that the high tracer concentration at Puli at night is due to the tracer being trapped by the thinning of the mixed-layer depth in the evening. The sensitivity of the local tracer transport to the change of the synoptic wind direction shows that under northeasterly due east (due north) environment, the pollutant transports from the southern source (northern source) of central Taiwan are most likely to induce a high concentration in Puli at night. This is the first study to distinguish the contribution of the sea breeze and the lee vortex in pollutant transport in Taiwan. The results obtained from idealized experiments provide the possible mechanism of pollutant transport, which could be taken as an insight to interpret the observations and guide the design of the field experiment to further establish the fundamental principles of the pollution transports in central Taiwan.

  • Li JIA, Fumin REN, Chenchen DING, Zuo JIA, Mingyang WANG, Yuxu CHEN, T ...
    2022 年 100 巻 3 号 p. 575-592
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/03
    [早期公開] 公開日: 2022/03/10
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    The Dynamical–Statistical–Analog Ensemble Forecast model for landfalling typhoon precipitation (the DSAEF_LTP model) identifies tropical cyclones (TCs) from history data that are similar to a target TC and then assembles the precipitation amounts and distributions of those identified to obtain those of the target TC. Two original ensemble methods in the DSAEF_LTP model, namely, mean and maximum, tend to under- and over- forecast TC precipitation, respectively. In addition, these two methods are unable to forecast precipitation at stations beyond their maxima. To overcome the shortcomings and improve the forecast performance of the DSAEF_LTP model, the following five new ensemble methods are incorporated: optimal percentile, fuse, probability-matching mean, equal difference-weighted mean, and TC track Similarity Area Index-weighted mean. Then, model experiments for landfalling TCs over China in 2018 are conducted to evaluate the forecast performance of the DSAEF_LTP model with the new ensemble methods. Results show that the overall performance of the optimal percentile (the 90th percentile) ensemble method is superior, with the false alarm rate lower than that of the original ensemble methods. As compared to five operational numerical weather prediction models, the improved DSAEF_LTP model shows advantages in predicting accumulated rainfall, especially with rainfall of over 250 mm. When implementing the experiments, above results, however, it is found that the model forecast performance varies, depending on the type of TC tracks. That is, the accumulated rainfall forecast for westbound TCs is significantly better than that of northbound TCs. To address this issue, different schemes are used to forecast the accumulated rainfall of TCs with the two different track types. The precipitation forecast performance for westbound and northbound TCs, using the 90th percentile and the probability-matching ensemble mean ensemble method, respectively, is much better than that using a single ensemble method for all TCs.

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