【年末特別企画】 人情噺・竿地蔵の物語 | 振り返りの多いこと 振り返りの多いこと 【年末特別企画】 人情噺・竿地蔵の物語
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【年末特別企画】 人情噺・竿地蔵の物語

 
 坐骨神経痛か仙腸関節障害か分かりませんが、痛みに悶絶しているこの頃です。
 「リフティングベルト」が効きます。


 お忙しいこの師走の週末、息抜きはいかがでしょう。
 お気に入りの噺家の声を脳内で再生いただいて、是非お楽しみいただきたい。



 痛たた。
 って、艶っぽいことで悶絶したいもんですがなかなかそうもゆきませんw
 そんなんでアタシはふと「身代わり地蔵」なんてのを思い出したのです。

 この痛みを誰かに代わってもらいたい、石のお地蔵さんならきっと痛みも感じないだろう、そんな「願かけ」をする方がいらっしゃいます。
 それが「身代わり地蔵」というものです。

 いや、お地蔵さんだって痛えのかも知れません。ただ、誰もお地蔵さんに聞いたことがないってだけの話。


 「祈願」というのは「ひたすら願う」ということ。

 アタシたちは叶わないからって願いを諦めたりはしないものです。それが「希望」というものです。

 痛えもんだからこちとら必死。
 そうして必死に願をかけてるうちに痛みなんか忘れちまいますw
 それが「ご利益」ということになるわけです。


 「一途な願い」、それ自体が身代りかな、なんてアタシは思ったりします。
 昔から色んな地蔵に何かしらの身代りが託され地蔵に願いがかけられたのです。




 身代わり地蔵をちょっと調べてみました。
 ざっと挙げてみてもこんなところ。

 とげぬき地蔵、ぴんころ地蔵、首地蔵、しばり地蔵、なごみ地蔵、ぬりこべ地蔵、やきもち地蔵、子守地蔵、縛り地蔵、六地蔵、お助け地蔵、わらべ地蔵、水子地蔵、合唱地蔵、一夜地蔵、厄除け地蔵、合掌地蔵、子守地蔵、子安地蔵、導き地蔵、子育て地蔵・・・


 色んなご利益由来の違う「お地蔵さん」がおられます。
 ちょいと挙げてもこれだけある。
 土地の名前がついただけのお地蔵さんもいますから数え切れるようなものじゃありません。驚きます。

 各種専門の医者を抱えた「総合病院」は便利です。掛かりつけの医者があちこち散らばってたら困ります。
 ところがお地蔵さんは色んなところに散らばってる。本気で願をかけようとしたら大変です。

 こっちの地蔵で刺さったトゲを抜いてもらい、あっちの地蔵に行って針供養してもらい、そっちの地蔵では痛みを代わってもらう、なんてことになる。
 あっち行ったりこっち行ったり、その間に今度は足腰が痛み始めたりしてw


 それは大袈裟かも知れませんが、地蔵信仰は古来からそれだけ身近なものでした。


 この「お地蔵さん」というもの。

 お地蔵さんの由来は「菩薩さん」だそうです。

 地獄に落ちた魂の苦しみを癒してくれる、そんなことが平安のその昔には信じられていたそうです。来世での魂の救済を願ったものだと伝えられます。


 ところが時代が新しくなってきますと「現世利益」ということになってゆきます。

 昔には死んだ後に地獄で救われたい、そんな信仰だったものが願い事も現金になってゆきまして「死んだ後のことなんかいい、生きてる間に現金をなんとかしてくれ」なんてw、ご祈願の方向が違ってまいります。


 今ではみなさんそういう現世のご祈願をなさる。

 痛みを代わりに背負いこんどくれ。子宝を何とか授けてくれ。
 死んだ後も世襲ができるよう裏金を作らせてくれ、とw



 でもいいんですかね? これ。
 死んじまったら生きてる時のことは関係ねえんです。
 貯めた銭だってあの世じゃ使えません。


 その上に死んだ後に何があるか、誰も分からないときています。
 冥土がどんなとこかはハッキリとしない。どなたに聞いても教えてくれないw

 なにしろ「行って見てきた方」がいらっしゃらない!


 だからアタシはあの世に行った時の準備をしといた方が安心と思うのです。
 こっちのことは生きてる人に助けてもらったらいい。死んじまったら借りなんて返さなくていいわけですw
 そんなこと言ったら叱られるかも知れませんがw



 ともかく、そうやって願いというものが地蔵に重ねられてきました
 祈願の対象や意味は変わっても土地のお地蔵さんには人々の願いが込められ伝えられてきたわけです。
 出征、水子、疫病、商売繁盛、安全祈願。


 こういうのは地域共通の願いごとだったりもします。
 お地蔵さんがたいてい目立つ街道筋の道端に立っているのはそんな理由です。

 針供養のお地蔵さんがいればお針仕事が盛んな土地柄ということになります。お着物を仕立てたりするご商売が盛んな地域というわけです。
 疫病に悩む地域なら感染症対策ですな。


 お地蔵さんへの願いをみんなで共有するのです。
 するとそれは我が故郷という想いにつながります。ここはわが町、わが村という意識です。

 だからお地蔵さんというのは村へと続く道、それも入り口の辺りに置かれることが多かったわけです。
 村の入り口、玄関口というわけです。

 それが後の今の世にも伝えられているのです。




 コロナですっかり在宅慣れしたご亭主も多いとか。

 「いつものソファにいっつも座ってんねんで。参るわぁ!」

 そんな風にコボす奥様がいらっしゃるとかw


 「いややわあ! まぁた地蔵みたいに座ってはるわ!」


 そんなことを言われた日にはなんとも始末におけません。
 まあ、ご亭主どころかそうやっていつも誰かしらテレビなんか見てるようなウチもあるでしょうけど、そしたら何体のお地蔵さんがいらっしゃるお宅なのかw


 その地蔵亭主は一家の主ではないですか!

 饅頭のひとつぐらい供えておやんなさい!




 アタシの勝手な考えですが、お地蔵さんてのは通りかかる余所の人たちに対するアピールにもなってたと思うのです。

 お地蔵さんが村や集落へ続く道の入り口にあります。地蔵に供え物があったりすれば目を引きます。

 「ああ誰ぞ地蔵はんの面倒みとんやな」

 そういうことになる。つまり「人目がある」ということになります。
 そうすると余所者や悪人はその村に無闇な手は出しづらくなるというわけです。


 さて、マクラが長くなりました。いつものこととご勘弁いただきたいw(汗)

 これは昔々の物語。
 「竿地蔵」というお話です。聞いたような聞かないようなお話w

 「傘地蔵」じゃない。
 「竿(さお)」、竿地蔵ですw。



 時は江戸の頃、戦国の世が開けた頃だったといいます。
 あるところに働き者のとても仲の良い夫婦がおりました。

 夫婦は村はずれのあばら屋に住み、亭主は畑を耕し山菜を採ったり毎日よく働いたそうです。
 女房の方も手仕事をして生計を支えておりました。

 女房の名前は「ミツ」。
 暮らし向きはよくなくても一生懸命に夫婦二人、楽しく暮らしていたとか。


 亭主が一日の仕事を終え疲れて帰ってきます。
 すると決まって亭主は女房としたがった。ミツをしきりと求めたといいます。


 こういう時、「なんや、何ご機嫌取ってん? 疲れとんちゃうのん?w」なーんて言われがちなのがご亭主というもの。
 しかし世の奥様方はなかなか理解されないかも知れませんが、疲れると殿方というのはそうなっちまうもんなのです。

 殿方というのは危機が迫ると子作りをしたくなる。
 疲労困憊すると本能で命の危険を感じるのです。すると死んでしまう前に子孫を残そうとするのです。
 子は自分の身代わり、分身なわけです。

 疲れたりひどく腹が減った時でもそんな本能が頭をもたげます。
 文字通り下半身が頭をもたげる。
 野良仕事で疲れてるはずなのにミツの亭主もしきりとしたがった。



 緊張しても殿方はそんな感じになります。なぜか場違いにあっちの方が元気になっちまいます。
 博打や株で大きな損をして真っ青になってる最中だってのにムクムクとあちらが元気になってしまうなんてのはよくある話。
 危機に瀕しても子孫を残せれば心残りはないというわけです。

 逆に満腹だったりあんまり穏やかな心地持ちだと殿方は気乗りしないものですw


 女性にはそういうところはあまりありません。
 ヘトヘトだったり疲れれば体が心配。産むなら安産です。だから穏やかな時の方がむしろ女性は艶っぽくなるものです。


 「なあ、なぁ。 あんた? ああっ! 辛気臭いなぁ!」

 なーんてw


 もちろん抱かれれば女です。そんなミツも亭主の求めに応じたものでした。
 しとどに濡れそぼりあられもない。おミツは女の悦びと幸福に浸ったものです。

 二人には子供ができませんでした。
 それが悩みではありましたが、ささやかながら夫婦は幸せでした。




 そんなある年のこと、天候不順が続きました。飢饉になり、どの家も食うものにさえ困りました。
 世の中が不穏になりやがて戦さが起きます。

 そこで村の男衆は足軽として俸禄をアテに戦さに馳せ参じました。「いざ鎌倉」というわけです。
 功なり名をあげれば武士に取立てられるのも夢ではありません。
 武士というのはサラリーマンのようなものです。決まった定収入につながります。採れる収穫や天気に暮らしが左右されることはなくなります。


 ミツの亭主もそうして戦さに加わったのでしたが亡くなってしまいました。
 哀れ一人残されたミツ。

 ミツは泣き暮れるしか他にありませんでした。

 それでも根っから働き者の女でしたから、ミツは悲しみに暮れながらも頑張ろうとけなげな決心をいたします。
 子供という忘れ形見に恵まれなかったのは悔いですが、亭主の想い出とともにしっかり生きてゆこうと胸に誓ったのです。


 おミツは近隣の村々に品物を売りに出掛けます。

 「おミツさん、これ売ってきてくれはらんか。」
 戦さですっかり男手がなくなった村からの頼まれ事もありました。
 いわば行商です。
 採れた野菜や手仕事の編み籠、そんなものを売り歩いて細々と暮らす女の寂しい一人暮らし。

 「おミツさんにええ人おらんかいな。」
 村の人たちもミツを気にかけてくれました。

 平和の戻った穏やかな日々でした。
 しかし穏やかであればあるほど、ミツの寂しさは日ごと募るばかりでした。


 亭主は死んでしまった。
 戦さが恨めしい。不安定な天気が恨めしい。地球環境、気候変動が恨めしいw

 せめて子宝を授かっていればよかったのに(泣)



 村へと通じる道。その境界にはご他聞に漏れず地蔵がありました。
 おミツは行商に出掛ける時には必ず地蔵に供え物をして祈ります。
 旅の無事を祈っていたのでしょうか。

 今日も行商から帰ってきた。どうにか無事でした。
 祈願のおかげかご利益か、追い剥ぎに遭うようなこともありませんでした。


 いえ、ミツの体の奥底では燻り続けていたのです。
 亭主が恋しい。狂おしい女の因果をミツは感じていたのです。

 ミツは実は心密かに乾いた寡婦暮らしが癒されることを祈願していたのです。それでミツは危険な一人旅をしていたかも知れません。

 しかし何も起きはしませんでした。
 いつの間にか泰平の世になっていたのです。
 理不尽なこともそうは起こりませんでした。



 この日も帰路についたミツ。出かける時に握り飯を供えたお地蔵さんのところにさしかかります。
 ふと見ると、地蔵の頭がテラテラと光っています。ナメクジが這ったようにそこが濡れています。

 「なんなん、これ。なんやの?」
 おミツは触れてみた。少しベトっとしている。指の臭いを嗅いでみた。
 ハッとしたおミツ。

 これはっ!

 それは覚えのある臭いでした。
 間違いなく男の標し、精、その残り香だったのです。
 なぜそんなものがこんなところに。


 しかし臭いを嗅いでしまったミツは躯に火をつけられたようになってしまいました。
 考える間もなくフラフラと地蔵の頭を跨ぐとミツは自分をなすりつけました。
 着物の裾を捲くり上げ諸肌を夢中で擦りつけたのです。

 懐かしい男の香り。
 日ごろの寂しさも吹き飛ぶ胸奥のざわめき。

 人の気配がしてミツは慌ててそこを離れました。そこは村へと続く道なのです。


 忘れかけていたものを思い出したミツでした。
 我が家に帰るとミツは一人耽った。
 秘所を濡らし潮を吹き、いくら押し殺そうとしても呻き声が漏れた。歯を食いしばりながらも啼き喘ぎ、おミツは何度も気をやった。


 おミツはいつしか寝入っていました。
 亭主を想ったのか頬は涙で濡れていました。可哀想なミツ。(泣・・・)





 今日もミツは手仕事のものや野菜を持って出かけてゆきます。
 いつもの地蔵のところに来ると握り飯を供えて祈願した。


 その帰り道、ミツはまた地蔵の頭が濡れているのに気づきます。
 やはり男のものです。
 おミツは地蔵に誘われている気さえしたものです。再び心のままに地蔵に跨るとその頭に擦り付けた。
 もうどうなってもいい。

 すると突然、空に稲妻が走りました。
 おミツは雷が自分に落ちるかと思った。
 ああ、なんということ。


 その夜のことです。誰かが板戸を叩きました。
 「誰やの?」

 頬を拭いながら戸を開けてみると見知らぬ若い男が立っていました。若者はニッコリと微笑んでいます。
 屈託のないその笑顔にミツは訝ることさえ忘れました。

 すると、黙ったまま若者はそっとミツの体を抱き寄せたのです。
 まるで前から知っている間柄のように、ミツを慰めるかのように。

 ミツの心はなぜかとても落ち着きました。
 しかしハッとミツが我に返ったのはその匂いでした。若者から香ったのは地蔵に嗅いだあの匂いだったのです。


 戸惑う間もなくミツは板の間に寝かされました。優しくいたわるような扱いにミツはされるがままに身を委ねました。
 中に男が入ってくるとミツは目を閉じました。
 おミツは自然のままに男を迎え入れたのです。

 それはとても硬かったとか。
 アタシもあやかりたい。自分が地蔵になっちまう前にあやかりたいものですw


 久方ぶりにミツが女を取り戻した夜でした。
 しかし若者は終始無言のまま一度も口を開くことはなかったといいます。




 翌朝、ミツが目を覚ましてみると若者はどこかへ忽然と消え、寝床には代わりに地蔵が横たわっていました。地蔵の頭には見覚えのある濡れた跡があります。 

 「いややわぁ、なんの悪戯なん?w」

 おミツは何の冗談かと思ったものです。しかしすっかり満たされたミツは怒る気もしません。思わず笑みがこぼれました。

 ミツは地蔵の場所に行ってみました。
 すると案の定、あるはずの地蔵がありません。夢だったとも手の込んだ悪戯とも思えない摩訶不思議の夜。


 「もう。しょうもないねぇ。」
 おミツはそう呟くと誰にともなく微笑んだものです。

 「うんしょ、よいしょ。」
 荷車で地蔵を運んで元へ戻しにゆくミツ。そこに村人が声をかけた。

 「おミツさん、ほれなんぞ?」

 「ちょいと添い寝してもろたんよw」
 おミツはさも可笑しそうに笑って答えました。

 「ほうなんか。」
 不憫なことよ。村の人はただ聞き流すしかありませんでした。可哀想なミツ。


 しかし悪戯にしても若い男などもう村にはおりません。ほんに地蔵の仕業か幻か。
 それでもミツの満たされた気持ちは変わりませんでした。ミツにはあの晩の出来事が不思議と信じられたのです。


 このところの寂しさ、焦りに似た気持ちはすっかり消え失せていました。
 感謝の気持ちさえ湧いてきて、おミツは地蔵がいとおしく、何度も手を合わせて拝むようになったものでした。





 ミツのお腹には子ができていました。
 おミツは喜んだ。もう寂しいことはないのです。


 村の人々も最初はいたく驚いたものでした。
 しかし誰も詳しく詮索はしませんでした。村のみなが我が事のようにミツの子宝を祝ってくれました。

 それは「授かりもの」と言うに相応しい玉のような男の子だったといいます。亡くした亭主にどこか似た感じがあったとか。

 母子は末永く幸せに暮らしたそうです。 めでたし、めでたし。



 その後、こんな話をどこからか聞きつけて子宝に恵まれない女たちが方々から地蔵に祈願に来るようになったといいます。
 「竿地蔵」と呼ばれて大切にされたと伝えられます


 いつしか地蔵には握り飯や饅頭ではなく、卵や行者ニンニク、山芋など、ことに精のつくものが供えられるようになったとか。

 「アレに励み過ぎて疲れてヘトヘトでは困るだろう。」

 地蔵へのそんな気遣いだったのでしょうか。それともw


 それにしても、本当にそんな有り難いご利益があったとして、お地蔵さんの「竿」はどこにあるってえのか?


 考えても考えても地蔵のように手も足も出ない!



 よあとがおろしいようで





※ ああっ!
 
 慌てて気がつかなかった! 師走だから!w

 まっまさか! 「竿」って何のことかお分かりにならない方がっ!
 ご婦人?
 まさか、ねえw


 いや、そういう言い方があるのです。スラングというか何というか。

 「マツタケ」とか「天狗」とか、「ドジョウ」なんてのもあります。
 「摩羅」なんてのは伝統的です。
 「タケノコ」、「息子」、「聞かん坊」。

 他に「バナナ」、「ソーセージ」、「アイスキャンデー」。
 「象さん」、「マムシ」、「ガラガラ蛇」。

 「金剛棒」、「バット」とか。「黄金銃」とか。


 真珠が入って・・・(略)


 いや、お題は「汁地蔵」とした方がよかったかな・・・
 今夜は鍋にするつもりです。



 おそまつ 



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