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太陽と月とは共存しない
2023/08/27 07:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作の100年後のレーエンデ国を舞台としたファンタジー。帝国の圧政からレーエンデ人を自由にしようと戦いの先頭に立つヒロインと、それを知略の面で支えるヒーローを仲間たちが盛り立てる展開はありがちだが、結末は、悲しくまた虚しさを感じさせる。目先の利益や安寧を優先する市井の人々の共感は、一時的なものだという虚しさ。それでもヒロインは、次の世代に思いを託して退場するのだ。次作もある様子なので、また読み進めてしまうだろうな。
二度目の革命には覚悟がいる
2024/04/20 14:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のぶ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『レーエンデ国物語 2 月と太陽』読了。
「革命の話をしよう」この言葉で始まるだけでわああってなる。心が沸き立つというか、粟立つというか。幼稚園のお遊戯会が始まる瞬間の親のような気持ちになる。うまく事が進むかどうかという不安よりも、いったいどうなってしまうのだろうかと知りたくないけど知りたい、みたいな追い求めるような気持ち。腕をさすって落ち着かせようにも、心が落ち着いてくれない。でもこの目で確と見届けなくてはならないという責任感。1作目を読み終え、2作目を手に取った瞬間、決して手放してはいけない重石を受け取ったような、そんな気持ちになったのを覚えている。『月と太陽』で新たなるレーエンデに自由の旗を掲げた2人の主人公は、対の存在でありながら輝くような魅力と生き様を見せてくれた。でもその人生は悲しみに満ちていて、最期まで輝かしかったかと言われればとても難しい。レーエンデ人を従えるイジョルニ人の支配層に生まれながら、内紛により家を追われ、レーエンデ人に囲まれて育ったルチアーノ。彼を受け入れた村で姉のように彼を支え、彼を導く存在として輝いていたテッサ。1作目は国籍から違う身分差だったが、今作は形式上の奴隷階級と支配階級の身分差が根底にある。その構造は表に出ることはなくても、それぞれが互いを思いやった結果として、随所に描かれていた。だからテッサはルーチェとの結婚を強く望まなかったし、ルーチェはアルトベリ城を攻略するためにエンゲ山を訪れたのだ。
レーエンデの自由はあと一歩のところまで進んだ。本当にあと少しだったんだと思う。物語が進むたびにここに新たな国が、自由と尊厳が守られた国が拓かれると途中まで信じていた。しかし読者側の幻想は、テッサの信念とともに折られる。テッサがどれだけ血に染まっても、レーエンデ人のすべてが彼女と同じ思いを持っているわけではない。強い信念のもとに集うのが同じ信念だとは限らない。レーエンデ義勇軍は軍隊ではなく、個人が集まっただけの群体だったというだけのこと。温度の上がったレーエンデ地方が、一気に冷えていくのを見た。その事態を引き起こしたのが、ルーチェの兄で最初の法皇帝となったエドアルドだというのがまた救いがない。決定的な亀裂が生じるに決まっている展開は、読み手の心も引き裂くようだ。
そしてレーエンデの太陽は沈む。手にかかったはずの自由はレーニエ湖の水平線に掲げられ、時が経つのを待つだけになった。ここを読んでいるときの心の葛藤は読んだ人にしかわかりえないと思う。ぜひ読んでほしい。怒涛の勢いのようにレーエンデを走り抜けた後、最後のページまで正気を保っていられる人は何人いるのか。美麗な表紙をじっと見つめて、しばし時間を置いてみてほしい。そして覚悟が決まったときに本を開いてほしい。革命はそこから始まるんだ。
革命
2024/01/12 07:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
無駄な怪力しかもたないと自らを悲観していた少女と、身分を捨て逃げてきた聡明な少年との出会いが、帝国支配下の歪んだ価値観にメスを入れる。愛と知と力を携え、美しい国「レーエンデ」の自由を求め立ち向かう王道ファンタジー、第二弾。
前作からどう繋がっていくのか気になっていたが、壮大な世界観にあわせた時間軸と情勢が、革命にリアリティをもたらしていると強く感じた。
小さな幸せを護るため、未来の自由を手に入れるため、命を賭す事も厭わない気高いレーエンデ人たちの意志が、少しずつ芽を出し引き継がれていく様子に胸が熱くなった。失う前から大切なものに気付けている者がそれを失い、犠牲をもってしても何も気付けない者が上に立つ。護るべきものがある事で生まれる強さと脆さの描き方が秀逸で、痛切に心を抉ってきた。
前作よりも戦闘シーンが多く、綿密に練られた一進一退の攻防が面白かった。知と力を合わせ城の攻略を謀るシーンが特に印象的で、キラキラしたファンタジーが苦手な方にもオススメ出来る作品。
戦、戦、戦で心は疲弊したが、前作で世界観が確立されてる分、「革命」という一つのテーマに集中出来て、疾走感もあり、ページ数が100も増えたようには感じなかった。本作の方が好み。
ここで終わったら悲しかった
2024/07/21 09:02
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投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
大人の王道ファンタジー。あまり二項対立のように感じないので、王道なのかな、という感じはある。読んでスッキリ、という話ではなく、このほうが好み。
読む年代によっても感じ方も変わりそうで、何歳で読んでも良い、世代を超えて愛されそうなシリーズ。
ただ今作は読むのがしんどいほど悲しい物語だった。新刊時に読んでいたらやりきれなかったな。続刊をすぐ読める状態で良かった。あらすじもまだ見ていないので、楽しみにしておこう。
「革命の話をしよう」
2024/04/18 18:55
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「革命の話をしよう」
簡潔だけど期待を煽るには十分な一言で始まる今作は
確かに熱くたぎらせてくれる怒涛の展開。
メインの登場人物には
後世に残る二つ名あるのですが、
なぜその名がついたかの理由がわかりにくいなー。
(次回作で、施策由来かと思われますが、
それを施行するに至る気持ちの経緯が)
「知識が人を作り、見識が世界を変えるのだ」
2024/04/10 18:33
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「知識が人を作り、見識が世界を変えるのだ」
言葉を多く携え、物事を多角的に捉え、
自分で判断ができることの強さを説く
彼女に幸あれ。
戦争とその渦中にある人のいろいろな面を描く
2024/03/20 17:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
図書館の予約の都合上、先にこちらを読む羽目になったが、これはこれで一冊完結とも取れるため、物語についていけないことはない。
自由を求めて戦い始めることになったのは、自発的というよりはその選択肢しかなくなってしまったことが大きいように感じた。
しかし、その思いが本気さが固まってくるにつれ、共感する人たちが増えていく。
武力で抗うことしかできなかったテッサ。
愛するが故にそれを知略で支えるルーチェ。
互いへの信頼関係はあるが、相手の気持ちを大切に想うあまり、ささやかな幸せを得ることはかなわない。
それを犠牲にしてでも、なんなら自分の心や命すらも犠牲にしてでも、自由のために身を捧げる、そのことがどういう意味を持つのか、戦争を実体験として知らないので理解が難しい。
群集心理、策略、人の思いの移ろいやすさ、信頼、団結、愛情、妬みなど、描かれる様々な戦いの中に人々のいろいろな面が描かれる。
どれもあり得る。
信念だけで生きられる人は少ない。
そのえげつなさも語られる。
戦争は武力で戦うだけでなく、人の心をこうして抉り、壊していくものなんだなと呻きそう。
アレーテが言うように教育は大事だ。
それによって武力で戦う以外の解決策を考える選択肢が生まれる。
架空の話ではあるが、この現実を生きている人たちのこころのギリギリの緊迫感が伝わってくるようだった。
なんとも貧弱な表現しかできないが、重層的に戦争の現実を突きつけられた気がした。
そういう重苦しい現実を飲みこみながら、時間は進んでいく。
600ページ超えているが、読みやすいスピード感にあふれた文章で、3日で一気読み。
しかし、徒労感も大きかった。
いろいろ考えさせられた。
布石に充てた第二巻
2023/12/21 16:35
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
架空の土地レーエンデの歴史を描く第二巻。
第一巻のレビューでも言及したように、このシリーズは特定の主人公を追うものではなく、レーエンデの歴史上の重要な出来事を、神の視点から主要な人物に焦点を当て、事細かに追う物語になっている。その点を承知していなければ、今回の内容はとてもつらい内容になっているだろう。詳しくはネタバレになるので言及しないが、何とか堪えて読んでもらいたい。必ず次巻で報われる。
レーエンデの百年後
2023/09/22 23:03
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作の続編を期待していたら、なんと、百年後のお話。ちょっと拍子抜け。いちおう、レーエンデの百年後という設定ですが。ユリアの時代から約100年後、帝国支配が続くルーチェと、村の娘テッサが出会い……。