新宿区「牛込柳町駅」近辺の寺社散策が続きます。今回は、浄土真宗の寺院、「浄栄寺」です。
浄栄寺は、都営大江戸線の牛込柳町駅を北へ数分の所にあり、薬王寺通りに面しています。この辺の町名は、「市谷薬王寺町」と云い、かつてあった薬王寺という寺院に由来しています。薬王寺は、明治維新の時に廃寺となっています。
浄栄寺(じょうえいじ)
山号:覺雲山
寺号:浄栄寺
宗派:浄土真宗系単立
創建: 元和2年(1616)
開山: 善乗法師
わたしは、大黒天の経王寺から向かいましたが、途中に「柳稲荷大明神」がひっそりあり、地域に密着している神社であることが伺えます。
浄栄寺の山門「甘露門」
薬王寺通りに入ると直ぐに、山門が見えます。
浄栄寺の山門は、木造の堂々とした門です。都会の寺院にしては歴史が感じられます。山門の左側に区教育委員会の説明板があります。
以下山門脇掲示板より
新宿区指定有形文化財 建造物
浄土真宗浄栄寺の山門で、安永7年(1778)の年号をもつ扁額や建築装飾の様式等か ら、江戸時代後期の建築と推定される。形式は薬医門で、切妻造・桟瓦葺である。柱や梁の材が太く、屋根は大振りで重厚な門構えをみせる。
浄栄寺は、江戸時代後期の文人・大田南畝(おおたなんぽ)と縁が深く、南畝はこの寺を「甘露門」と称し度々会合を催していた。この山門に掲げられた扁額にも「甘露門」と記されている。
かつてこの界隈は、袋寺町と呼ばれる寺町であったが、この山門は当時の面影を伝える数少ない建築であり、また、区内でも希少な江戸時代の建造物として重要である。
浄栄寺のおもな歴史、縁起などについての記載もあります。
元和2年(1616)に善乗法師が市谷田町に開山、のちに当地に移転しています。創建400年を迎えます。狂歌の大家として知られる太田南畝(蜀山人)、俳人で絵師(江戸琳派の祖)酒井抱一ゆかりの寺として知られます。
甘露門から入ります。扁額の文字は「甘露門」。
浄栄寺の梵鐘
直ぐ左に鐘楼があります。「浄栄寺の梵鐘」として、これも新宿区有形文化財工芸品に指定されています。
梵鐘の説明板です。
以下掲示板より
新宿区登録有形文化財 工芸品
「浄栄寺の梵鐘」
浄栄寺第3世覚円の発願により、元禄9年(1696)に鋳造された銅造の梵鐘。総高134.5cmで、江戸鋳物師西嶋伊賀守藤原兼長の作である。
江戸鋳物師の製造技術が頂点に達した時期の作品で、江戸鋳物師の作風・鋳物技術を知ることができる。また、銘文から当寺の寺歴や梵鐘鋳造の歴史を知ることができ、史料的価値も高い。
太平洋戦争中の供出により区内の江戸時代の梵鐘は残存数が少なく貴重である。
平成18年10月 新宿区教育委員会
また、浄栄寺所蔵の文化財として、尺八「放下着」一式ならびに普化尺八伝授関連資料が、新宿区指定有形民俗文化財となっています。
以下説明板より。
新宿区指定有形民俗文化財
尺八「放下着」(ほうげじゃく)一式ならびに普化(ふけ)尺八伝授関連資料
尺八と付属する道具一式(歌口保護具、袋、筒、箱)、ならびにこの尺八伝授関連資料三点(「放下着傳来略記」「鈴鐸話并往来」「免許状」)から構成される。
尺八は、江戸中期以前の製作と推定される全長42.1cmの小ぶりの竹管で、歌口に近い部分から二節に向かい、背面部に「放下着」と金泥で銘が記される。普化宗門の法器として用いられた虚無僧尺八の古管として位置づけられ、ほぼ制作時の形状・色合いを保ち、いまなお吹笛可能な管である。
江戸中期以前の普化尺八の遺品として貴重であるとともに、伝授に関わる資料も併せて現存することは稀有である。またこれらは尺八の製作ならびに伝承に関わる歴史的変遷を示すものとして重要である。
平成19年9月 新宿区教育委員会
本堂
参道を行くと直ぐに本堂です。扁額の文字は山号の覺雲山。寺紋は、「九曜の紋」です。
本堂の左側には灯篭などが並びます。
本堂の九曜の紋のついた旧鬼瓦です。
境内を見ていくと、カメを飼っているようです。ミシシッピアカミミガメで
町で迷子になっていたので浄栄寺で飼うことにしたそうです。
最後に御朱印です。本堂の右側の寺務所から御朱印を頂こうとしましたが、浄土真宗は御朱印を扱っていないことを思い出しました。追善供養を行わない浄土真宗には御朱印がないのです。代わりに「散華」を頂きました。
寺務所。
散華
おわりに
市谷薬王寺町には、小さな寺院が数多く存在します。
今回参拝した寺院が、浄土真宗寺院である浄栄寺ですが、江戸時代の歴史が感じられる寺院でした。一つは、江戸時代後期に造られた甘露門。そして、江戸時代前半に鋳造された銅造の梵鐘も残っています。新宿区内に残る江戸時代の梵鐘は、大戦中の金属供出により多くが失われ、区内にある約130の寺院でも13件しか残っていないようです。
このように歴史的遺産を見ることができ、境内は狭いですが、都心で寺院らしい寺院という感じを味わえて良かったです。ありがとうございました。
以上