古井由吉、反小説の試み 松浦寿輝、又吉直樹ら襲う感情
2月18日に82歳で亡くなった古井由吉(よしきち)さんは、作家がこぞって敬愛する純文学のレジェンドだった。往復書簡の共著があり、親交のあった詩人で作家の松浦寿輝(ひさき)さんは寄稿で、「途方もない文章の書き手だった」と悼む。「物語ともエッセイとも散文詩ともつかない前代未聞の『言葉の芸術』」「『反小説』の試み」という古井文学の神髄とは。
松浦寿輝さんが寄稿
古井由吉さんが亡くなった。今日の日本の文学創造の現場に、突然ぽっかりと、巨大な空白が広がってしまったように感じる。この空白はもう何によっても、誰によっても埋められないのではないかと思うと、悲哀というよりむしろ恐怖に近い感情がそくそくと込み上げてくる。
何しろ途方もない文章の書き…