第1回今回も彼に投票を? 4年前のトランプ支持者に電話した

有料記事トランプ王国 あれから4年

機動特派員・金成隆一
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 トランプが勝利した前回のアメリカ大統領選挙から4年。かつてトランプに1票を投じた人々は、いま何を語るのだろう。

 前回の選挙を機に、私はトランプに投票した人を450人ほど取材した。熱心に支持した人もいれば、迷った末に1票を入れた人もいた。今回、コロナ禍で訪問は難しかったが、当時彼らが教えてくれた番号に日本から電話をかけて聞いてみた。――今回もトランプを支持するのですか?

 古いノートに書き留められた4年前の彼らの言葉と、同じ口から語られる現在の言葉。両者を並べてみると、現代アメリカの姿が浮き彫りになるかもしれない。(敬称略)

 トランプ当選の原動力「ラストベルト」。かつて製鉄業と製造業で栄え、代々「民主党支持」という労働者が多いエリアだったが、4年前はトランプを支持するために共和党に移る白人労働者が相次ぎ、全米の注目を集めた。今年の大統領選挙が行われる11月を前に、彼らは何を考えているのだろう。今年9月、当時トランプを支持した一人に電話をかけてみた。

 オハイオ州トランブル郡の元製鉄所労働者ジョセフ・シュローデン(66)は元気がなかった。通称ジョー。新型コロナウイルスを警戒して、自宅に閉じこもりがちの日々。昔の仲間とつるむ頻度が激減していた。

 トランブル郡は民主党の常勝地域だったが、トランプは共和党候補として1972年以来の勝者となった。トランプ当選の「グラウンド・ゼロ(震源地)」(著名ジャーナリストのファリード・ザカリア)とも呼ばれる。

 ジョーが電話越しに嘆く。「コロナのせいで、飲食店はどこもテイクアウト頼みで売り上げが激減だ。友人の調理人は、これまで週6日、72時間働いていたが、今では週4日、36時間に半減してしまった。みんな大変だよ」

 ただでさえ基幹産業が衰退し、人口流出が続く。これまではジョーも「残った職場は、賃金の安いサービス産業ばかりだ」と嘆いていたが、そのサービス産業すら揺らいでいる。

 「オレは太っていて、糖尿病で、身体が半分死んでいるから、コロナにかかればサヨナラだ。ワクチンができるまで自宅にいるしかないんだ」

 ジョーの心配は、自らの健康…

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この記事を書いた人
金成隆一
大阪社会部次長|災害担当
専門・関心分野
国内社会、米国、外交、ジャーナリズム