分極社会
11月3日に迫る米大統領選を前に、ソーシャルメディアを使って米社会を分断しようとする動きが続く。4年前と同様、ロシアの影が見え隠れする一方、米国内から拡大する陰謀論もある。フェイスブック(FB)やツイッターなど、米IT大手は対応に躍起だ。
「最初は、『え? 冗談でしょう』と思った」
ニューヨーク市に住むラリー・クラコーさん(48)は今夏、自分が記事を書いていたニュースサイト「ピースデータ」が、ロシア当局による偽装サイトだと聞かされ、驚いた。
肉屋で勤務するかたわら、ブロガーとして記事も書くクラコーさんは5月、ツイッターで、「おすすめ」と表示されたピースデータのアカウントをフォローしたことをきっかけに、連絡を取り合うようになった。自分の記事のリンクを送ると、「ピースデータにも記事を執筆して欲しい」と頼まれ、「アレックス・ラクスタ」と名乗る編集者を紹介された。
この編集者はピースデータについて、「ドイツにある非営利団体だ」と説明。クラコーさんは、「米国で新型コロナウイルス対策の予算が、トランプ大統領を支援する企業に渡っている」と批判したり、「米主要メディアは広告主の意向に沿った報道を続け、真実を報じていない」と訴えたりする計9本の記事を書いた。クラコーさんは「記事を直されたことはなかった」と話し、不審さは感じなかったという。ピースデータに掲載された記事では「ドナルド・トランプ氏は大統領なのに、外国政府からお金を受け取っている」という記述も掲載された。
米メディアは、ライターたちは1本当たり30ドル~250ドル程度を受け取っていたと報じている。記事の報酬を尋ねると、クラコーさんは「個人情報だ」として明かさなかった。
だが、「アレックス」の説明はうそだったとみられる。FBは9月初め、2016年の米大統領選に介入したとされるロシア企業「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」とつながりのある個人がかかわる、13のアカウントと、二つのページを削除したと公表。そのページの一つが、ピースデータだった。FBによると、米連邦捜査局(FBI)からの連絡が端緒だったという。
「アレックス」からクラコー…
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