世界銀行が危惧する「静かな」金融危機 日本が陥った罠

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聞き手 ワシントン=青山直篤
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 新型コロナ禍は、二つの世界大戦と世界恐慌に次ぐ、近代史上4番目の規模となる危機を世界経済にもたらした。多くの国が財政出動金融緩和策に踏み切ったが、ウイルスは今も猛威を振るっている。世界経済の破綻(はたん)は避けられるのか。昨年6月に世界銀行チーフエコノミストに就いたカーメン・ラインハートさんに聞いた。

コロナで当座の資金繰り、見のがされた不良債権

 ――コロナ危機は、歴史的にみて、どんな危機なのでしょうか。

 「多くの都市がロックダウン都市封鎖)となり、経済活動が激しく破壊されたという意味では『戦争』に近い、と私は考えています。そしていま、世界経済は静かな金融危機へと移行しつつあります。過去に何度も起きた典型的な金融危機とは、やや様相が異なっている、といえます」

 ――主要国の大盤振る舞いの財政・金融政策で、経済は小康状態を取り戻したように見えますが。

 「コロナ危機の発生後、先進国、新興国を問わず、世界中の銀行は大量のマネーを企業や家計に流し込んできました。時には政府に促される形で、借金の返済猶予を認めるなどして当座の資金繰りを支えてきました。しかし、1年たった今もパンデミック(感染大流行)は続き、営業制限など非常時の措置も残っています。その結果、失業が長引く個人や、売り上げ減が続く小売り、娯楽、観光産業では、当座の資金繰りの問題ではなく、長く債務の返済が見込めないケースが増えていきます」

 ――それがいま、起こりつつある「金融危機」ですか?

 「財政・金融政策ばかりが注…

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この記事を書いた人
青山直篤
国際報道部次長|米州・国連担当
専門・関心分野
国際政治・経済、グローバル化と民主主義、日米関係、歴史と文学
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